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中国に敗れた「蓄電池生産」シェア。苦しむ日本企業に勝ち目はあるか

ビジネス

コストだけでなく技術力でも勝る中国企業

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 では、仮にガソリン車規制などでEVの需要が高まり、蓄電池の需要も伸びたと想定しましょう。ここで立ちはだかるのが中国企業です。いまだに中国製品は安く質が悪いというイメージを持つ人も多いようですが、蓄電池分野ではむしろ先行しているといえます。

 車載向けLiイオン電池の世界シェアをみると2013年はパナソニックが38%とトップを走っていましたが、2021年にはCATL(中国・寧徳時代新能源科技)が32%と1位となり、2位には22%のLGエナジーソリューション(韓国)が追随。残念なことにパナソニックのシェアは15%しかありません

 CATLがシェアを伸ばした背景には中国政府が行った補助金によるEV支援策があり、中国製EVの普及に伴ってCATLも売上高を伸ばしていきました。しかし、国策に甘えるだけでなく、技術力の向上にも積極的です。

 同社は国内メーカー向けの生産で培った資本・技術力をもとに積極的な研究開発を進めてきました。海外メーカーからのスカウトを含め、数千人規模の研究開発人員を抱えているようです。また、AIを活用した生産設備の効率化も行っています。

価格競争になったら太刀打ちできない

 同社の技術力は中国以外の自動車メーカーも認めており、テスラやBMW、ダイムラーなどがCATLからEV用電池の供給を受けています。そして近年では自動車メーカー各社がEV用電池の安定供給を目的として、CATLとの5年、10年にもおよぶ長期契約を結んでいます。

 トヨタも2019年にEV用電池の技術向上・リサイクル法の構築を目指してCATLとの包括的パートナーシップ契約を結んでいますが、これも安定供給が狙いでしょう。ちなみにトヨタはパナソニックとの合弁会社(PPES)を通じてEV用電池を生産していますが、CATLともつながりを持つことでリスク分散を狙っていると思われます

 つまり、CATLが自動車メーカーの下請けとして受注するというよりも、自動車メーカーがCATLに電池を「供給していただく」という構図ができつつあるのです。日本は国として年間600GWh規模の蓄電池生産を目標としている一方、CATLは2025年までに同社単独で592GWhの生産規模を目標としており、その差は歴然です。受注量が増えれば増えるほど生産コストは下がるため、価格競争で日本企業はより苦しむことになると思われます。

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