中国に敗れた「蓄電池生産」シェア。苦しむ日本企業に勝ち目はあるか
2022年4月22日、経産省は日本の蓄電池生産について、2030年までに2020年の20倍となる600GWh(ギガワットアワー)の生産目標を掲げました。これは電気自動車(EV)800万台分に相当する容量。EV普及のほか、再生可能エネルギー発電の整備を視野に入れているものとみられます。
製造業における新たな分野の開拓が期待できそうですが、蓄電池として現在主流であるリチウムイオン電池の現状を見ると実は課題が多く、目標達成は難しいかもしれません。今回の記事では、蓄電池自体の技術的課題や、中国企業との競争による経済面での課題から日本の蓄電池産業が発展しにくい理由を考えてみます。
京都議定書から25年、各国の思惑は
石油・石炭などの化石燃料を使用しない“脱炭素社会”の構想は昔から謳われていました。それこそ、温室効果ガスの削減目標を掲げた京都議定書に署名がされたのは、もう25年前も前になります。
脱炭素・低炭素社会を目指す本気度は国によってさまざまですが、特に積極的なのはEU諸国。自動車に厳しい規制を掛けるほか、再生可能エネルギー分野で多額の資金を投じています。市民の環境意識の高さもうかがえる一方で、経済分野でアジア・北米に対抗すべく、自分たちでルールを設定することで自国産業を保護し、成長させたいという思惑もあるでしょう。
また、化石燃料の3~4割をロシアに依存するため外交面でロシアに弱みを握られているともいえ、地政学的な理由からも脱炭素を目指しているようです。ちなみに2022年2月下旬から始まったロシアによるウクライナ侵攻後も、EUは3か月間で7兆円分以上の資源をロシアから購入したと推定されています。
脱炭素に欠かせない蓄電池の存在
どんな理由ともあれ脱炭素社会に向けた取り組みは着実に進んでおり、特に産業界ではEVの開発と、再生可能エネルギー発電の導入が進められています。この2つに欠かせないのが蓄電池です。
EVに関しては、トヨタ自動車が2030年までに世界販売台数の3分の1にあたる年間350万台をEVとする目標を掲げており、両者は鶏と卵の関係ですがEVが普及すれば蓄電池需要も伸びていくことでしょう。
一方、再生可能エネルギー発電に関しては太陽光、風力発電の発電量が安定しないという欠点があり、気候次第では過不足が発生してしまいます。余剰電力を蓄電池に貯めておけば不足時も安定供給が可能となるため、再生可能エネルギー発電は蓄電池と併用することが基本と考えられています。実際に経産省は再エネ発電の安定化を見据えた蓄電池の研究を支援しています。