30歳で“老舗銭湯の店長”に転身した元サラリーマンに聞く、「収入が半分」でも決断したワケ
「収入面は半分」でも決断した理由は…
ここで話は製薬関係の会社5年目で転職を考えていた長谷川さんの姿へとつながる。
「いや、最初は無理だろうと思って。銭湯どころかお店も経営したことないし、続けられるのかなと。あとは無粋な話ですが給料も半分くらいになってしまうので、収入面での不安もありました。ただ銭湯の内側を知って、結果がすぐに目に見えてわかったり、お客さんの反応を見れたりと、同時に楽しさも強く感じていたので悩みました」
フィクションの中では問題にならなくても、現実には夢では終わらないさまざまな問題がある。悩む長谷川さんを最後に一押ししたのは5年後の自分の姿だった。
「5年後、銭湯を断ってこのままサラリーマンを続けている自分と、サラリーマンを辞めて銭湯の店長になっている自分を想像したんです。そしたら、サラリーマンを辞めた後悔よりも、銭湯を運営しなかった後悔のほうが明らかに大きいだろうなと思ったんです。
あと今後またサラリーマンになれることはあったとしても、銭湯の店長になるのは100%無理だなと思って。死ぬまで後悔しそうだったので、銭湯店長になることに決めました」
会社員も“得難い体験”急がなくていい
こうして製薬会社のサラリーマンから下町の銭湯店長へと転身を遂げた長谷川さん。最後に将来に悩む若手社会人へのメッセージを聞いた。
「銭湯の店長をしているのは本当にご縁の賜物だと思います。ただ、好きなことを続けられたのは、会社員というある程度安定した後ろ盾があったからだと思います。
会社員というのも今思えば得難い体験なので、もし悩んでいる方がいたら、すぐにやめるという決断をせず、できる範囲で好きなことを始めてみてはいかがでしょうか。必ずしも仕事につながるわけではないと思いますが、ご縁が広がっていくのは楽しいですよ」
<取材・文/日和下駄>