赤字の巨大企業を“ベンチャー魂”で蘇らせた男
LIXILは、2011年に大手住宅設備メーカーが合併してできた年商1兆6000億円の大企業です。彼が社長に就任したのは2016年。彼を迎えた当時のLIXILは、統合の効果が出せずに赤字に陥っていました。
そこで彼は、就任直後に役員数を半減させて指揮系統を刷新し、ベンチャー企業のような挑戦的なモノづくりができるように改善に乗り出します。番組によれば、大企業にありがちな失敗の犯人探しを止めさせ、「失敗から学んだことや、失敗をいかに次に生かすか」を追求するように指導しましたといいます。
「自分たちでリスクを意識しながら実験していく。そして、実験の結果に関しては責めない」ということが大事だと瀬戸氏は番組で語りました。続けて「失敗からは学ぶ限りは投資だ」と力強く述べていました。
その甲斐あってか、5月7日発表の2018年3月期決算の売上収益は前期比.9%増の1兆6648億円、事業利益は前期比16.1%減の753億円、当期利益は前期比28.4%増の546億円となり、2年連続で過去最高益を記録したのです。
新陳代謝が進まない日本の社会
経済産業省の「第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会取りまとめ」によると、米国の上場企業数は1996~2017年にかけて約半数まで減少していますが、東証1部及び2部の上場企業数の合計は1766社から2380社になり、4割増加していると指摘しており、「新陳代謝が進んでいない」との見方を示しています。
平成28年度産業経済研究委託事業を見ても、ベンチャーキャピタルの投資案件のグローバルの平均案件規模は、アーリーステージ、レーターステージともに上昇傾向が見られますが、日本では上昇はなく、また案件規模も10分の1程度の約1億円程度に収まっているのが現状と言えます。
このような統計から見ても分かる通り、日本ではベンチャー企業が生まれにくい状況にあり、世界的な動向から乖離していると言わざるを得ません。
彼のベンチャー魂に共感の声が多数
ネット上では、瀬戸さんのベンチャー魂あふれる考えに共感の声が多く挙がりました。
「失敗を認めてそれを生かす、社長のお考えが素晴らしい!」
「大企業病には、ベンチャー魂が特効薬だ」
「うちの会社もこういう風にならないかなぁ」
日本では旧態依然とした慣習にとらわれた企業は少なくなく、古い考え方を打破していくのは容易なことではありません。
そのような状況の中で、新しい風を大企業のLIXILに送り込んだ瀬戸社長。彼が繰り出すであろうLIXILの次の一手が楽しみです。
<TEXT/湯浅肇>