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余命5年の41歳ラッパーが語る「今日会社を辞めたっていい。選ぶのは自分」

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「今の職場で頑張るべき」って価値観、誰が決めたの?

ダース

――この記事を読んでいるビジネスマンには、転職したくてもなかなか踏み出せない人もいるかもしれません。事務所の移籍と転職は少し異なるシチュエーションかもしれませんが、何かアドバイスはありますか?

ダース:まず今の状況の分析。「流れに任せて何となくこの職場にいる」ではなく、自分で選択してここにいるという気持ちでいられることが大事です。単純に今の仕事が嫌だと思うんじゃなくて、何が嫌かってことを考えたほうがいいですね。納得できないってことは、ノイズが混ざっている状況ってことだから。

 例えば上司が嫌なんだったら、さっき(前回の記事)言ったみたいにゲーム感覚でこの上司はこういうキャラだから、弱点はここで、みたいに攻略する手もあるし。どん底だと思っても、「これは脱出ゲームだ」って発想を変えてみてもいい。転職も大ごとかもしれないけど、でも自分が今の場所にいることも実は大ごとでしょ。そう考えればどんな悩みも少しはフラットになります。

――なるほど、まずは今の状況を客観視して分析することが重要なんですね。

ダース:そもそも「今の職場で頑張るべき」っていう価値観って誰が決めたのって話で、別に明日出社しなくてもいい訳ですから。結局なぜそれができないかって言ったら「怒られるかも」とか思っちゃうからでしょ。選択肢としてはそれもアリだけど、「俺は選ばないよ」というスタンスを取り続けることで、今自分の立ち位置が明確になっていくと思います。

 まあ、どうしても「人間関係で恩義を感じる」って言うんだったら、その関係を守っていけば良いと思うし。その辺はパラメータ化を明確にしていくことで、自分の置かれている状況について、混乱した頭がすっきりしてくると思いますよ。

 今日仕事を辞めて、画家を目指してフランスに行ってもいいし、役者を目指してハリウッドにいってもいい。選択肢はいくらでもあるんです。

「いなくなるときに何も持っていない状態が理想」

ダース

――最後の質問です。残された時間をどのように過ごし、家族、仲間に対して何を残していきたいですか?

ダース:僕、CDとか本とかをガンガン後輩にあげてるんですよ。最終的に自分がいなくなったときに何も持っていない状態が理想。残しちゃったらスミマセンみたいな感じ。

 レコードコレクターの先輩が亡くなったとき、「このレコードのこの曲が良い」とかっていうのが受け継がれないまま、中古レコード屋とかに流れちゃうのはすごくもったいないな~って思ったんです。

 だから生きているうちに「このレコードのB面にすごい良い曲入ってるんだよ」とか、知識も含めて全部渡してあげたい。先に通った人が後ろにパスするって感覚です。これもある種のゲーム的な発想で、「この後輩はこういうの結構好きだから、これを渡したらこうなるんじゃないのかな」みたいのを、なるべく面白がりつつやっていますね。

――ご家族に渡しているものはありますか?

ダース:2人いる娘には、赤塚不二夫の漫画とかをあげています。自分の中にある知識とか経験とかを最終的に全部パスし終えたら役割終了かなって。でも案外、新しいモノもどんどん見つけて買っちゃう(笑)。新しいモノを見つけちゃうっていうことこそ、生きているってことなんだけどね。

<取材・文/ヤナカリュウイチ 撮影/山口康仁>

1988年生まれ。「bizSPA!フレッシュ」編集部で、人生模索してます。お酒の誘いは断らないほうです。ツイッターは@ia_tqw

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