30代過ぎて「好きな仕事・やりたい仕事」を追い求める人が直面する危機
得意なことも、環境と合わないと発揮できない
得意なことは、それを発揮できる環境にいないと埋もれてしまいます。世界的なギタリストも、工場勤務ではギターの腕を発揮することはできません。人は、どんなに得意で向いていることでも、能力を発揮できる環境にいないと飼い殺しにされてしまうのです。この関係を整理してみましょう。以下は、MIT(マサチューセッツ工科大学)で教鞭をとり、社会心理学の父と呼ばれたクルト・レヴィン教授が示した公式です
■ B(behavior):人の行動=f(function):関数P(Personality):個人要因×E(environment:環境要因)
この公式の意味を簡単に言うと、人の行動は個人のパーソナリティだけでなく、置かれた環境によって大きく変化するということです。
実際、私が選抜と育成を行った7000名の選ばれたリーダーたちは、新卒で希望した仕事についていないケースが約8割でした。ですが、「やってみたら、するするできて楽しくなった」「上司やお客様、同僚に恵まれ、気がついたら出世していた」というのが実情だったのです。
逆に「希望した仕事、やりたい仕事をやったけれど向いていなかった。イメージと実際は違った」という声もコンサルティングやキャリア相談の現場でよく聞きます。得意なこと・向いていることを知るだけでは宝の持ち腐れ。それが発揮できる環境を見極め、選択してこそ、意味があるのです。
念のため、「今すぐ転職しろ」と言っているのではありません。今、所属している会社で、自分に有利な環境やポジションが得られれば、それに越したことはありません。
得意から好きを見つけ出せ
注意が必要なのは、「得意なこと・向いていること」で、「儲かる仕事」についた場合です。向いているので、どんどん成功し、認められ、出世し、稼げます。ただ、それが好きでもやりたい仕事でもなければ、心にぽっかり穴があきます。そして、ある日突然「仕事にやりがいを持てない」と悩むのです。
では、どうすればいいか。今の仕事に「好き」を見つければいいのです。ある大手公認会計士法人系のコンサルティング会社に勤務する39歳のエース会計士の例です。彼は、リスクマネジメントをクライアント先に提供していました。
でも、ひたすらクライアントにダメ出しを続け、イヤな顔をされるというこの仕事に、心の限界を迎えました。彼は、リスクマネジメントを得意としながらも、相手を尊重する資質も高かったのです。「ダメ出ししかしない」この仕事は、彼の資質とは合っていなかったのです。