勢い任せの運営も…販売累計1億個ブランド「ボタニスト」が苦境を乗り越えたワケ
売り場を消費者目線で眺めて調査した
BOTANISTといえば、透明パッケージに手書き風のフォントが特徴的だが、当時世に出ていたヘアケア商品の中では珍しい存在だった。今井氏はBOTANISTのパッケージで工夫したことについてこう説明する。
「あるとき、市場調査のためにヘアケア商品が並べられている売り場を見に行ったんです。その際、消費者として考えたときに本当に必要なものか。日用品としてバスルームに置いておけるものかという、本質的な視点からブランドを見るようにしました。
そして行き着いたのが、植物を育てるように心と身体をいたわり、人の温もりや安らぎを感じられる、シンプルかつミニマルなデザインでした。『Less is more(少ないほうが豊かである)』を体現するような、BOTANISTらしいデザインにこだわることで、ブランドの世界観の醸成を意識していました」
こうしてBOTANISTが生まれたわけだが、初期はECを中心に展開していたという。というのも、テレビCMを打つような資金はなく、小さく始めるほかなかったからだ。
流行直前のインスタグラムをいち早く活用
では、どのように無名なブランドを一躍ヒット商品にまで導いたのか。その鍵は、2010年代半ばごろから注目され始めたインスタグラムが握っていた。
「ストリートカルチャーで影響力を持つアーティストやクリエイターが、インスタグラムを使って自身のブランディングを行なっていたのを参考に、BOTANISTの持つライフスタイルブランドとしての世界観を表現できないかと考えたんです。大手メーカーみたいに広告予算がない状況下で、ファンを作るにはまさに最適なプラットフォームだったんです」
さらに、先行して運営していたサロニアで築いたスタイリスト、メイクアーティストなどにBOTANISTをギフティングすることで、徐々にブランド認知を高めていったのだ。加えて、ECサイトのみならずバラエティストアやドラッグストアへの配荷の拡大に伴い、ボタニカルブームを牽引するようなブランドへと成長した。