消費税は必要なのか?「5%に減税」を野党が公約にする今、専門家に聞いた
消費税率20%を超える国もあるが…
さらに、「社会保障が充実しているヨーロッパ諸国の消費税率は20%を超えており、日本も社会保障充実のためには消費税増税が必要だ」という意見についても「全くの不合理」と切り捨てる。
「税金が財源ではない以上、消費税を引き上げなくとも社会保障支出を増やすことは可能です。したがって、そうした意見は根拠に乏しく、やはり妥当ではないと思います。そもそも、財源の問題とは別の意味でも、『社会保障充実のためには消費税増税』という考え方は不合理です。
それは、そうした考え方の一般的な根拠である『消費税であれば、社会保障制度の主な受益者であり、現役世代と比べて所得が少ない高齢者にも応分の負担が生じる』という構造自体に起因します。なぜなら、子供とは、所得がゼロなのに高額の出費が必要な存在だからです。つまり、消費税は高齢者以上に、子育て世帯に負担をかける性質を持っているのです。
したがって、消費税を増税すれば少子化をより一層助長し、実体的な意味での社会保障制度の基盤、というより社会そのものの持続性を危うくすることになりかねません。他方で、私自身は、やはり財源問題とは別の意味で、今のような社会保障支出の増え方には問題があり、そちらについては是正されるべきだと考えています」
国会では10月12日に各党の代表質問が行われ、共産党の志位和夫委員長が消費税の5%への引き下げを求めた。岸田文雄総理は「当面、現在の10%を維持する」と考えを示した。今後の税制に注目だ。
<取材・文/望月悠木>
【島倉原】
1974年、愛知県生まれ。1997年、東京大学法学部卒業。株式会社アトリウム担当部長、セゾン投信株式会社取締役などを歴任。経済理論学会及び景気循環学会会員。現在は株式会社クレディセゾン主任研究員を務めながら、経済評論活動を行っている