女性のカレー離れに挑むハウス食品、話題の“カップ入りカレー”誕生秘話
コロナ禍で食に関する消費志向が変化している。巣ごもり需要の高まりによる「プチ贅沢志向」や内食機会の増加に伴う「調理の時短」など、食生活におけるニーズはより多様化したと言えるだろう。
そんななか、大手食品メーカーのハウス食品が今年2月に発売した「やさしく夜遅(よるおそ)カレー」が、密かに話題を呼んでいる。
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今回は、カップ入りカレーというカテゴリーの商品を出した背景や、ヒットに繋がっている理由をハウス食品株式会社 食品事業二部 チームマネージャーの長瀬仁美氏に聞いた。
“カレー離れ”が進む若い単身女性に着目
ハウス食品といえば、エスビー食品と並ぶ国内カレー界の巨人。「バーモントカレー」「ジャワカレー」「ククレカレー」など、数多くのヒット商品を世に出してきた。そんな同社が発売したやさしく夜遅カレーは、これまでのカレールーやレトルトカレーとは系統が違う“カップ入りカレー”という新ジャンルの商品になっている。
長瀬氏は開発した経緯について「カレーから遠ざかっている20~30代の単身女性に美味しく食べてもらえるカレー商品を出したかった」とし、次のように説明する。
「カレーは国民食として認知されているものの、消費者調査をしていくなかで、20~30代の単身女性はレトルトカレーを年に数回しか食べないことが浮かび上がってきました。これは昨今定着している糖質制限ダイエットの流れから、ご飯に含まれる炭水化物を避けるようになってきたこと、ごはんを炊くことを面倒と感じる単身女性が増えた背景があります。
そこで、“カレー離れ”が進む20~30代の単身女性をターゲットに、『夜にぴったりな、ごはんがなくても楽しめる新しいカレー』を作り、新しい需要の掘り起こしを画策するようになりました」
商品の輪郭が見えるまで1年、完成まで3年
レトルトカレー市場のさらなる活性化を図り、カレーを食べるシーンを広げるべく、新たなコンセプトの商品を開発するに至ったやさしく夜遅カレーだが、開発には3年もの歳月を費やしたという。
「『日々の忙しさから調理する手間を省きたい』『夜遅くても罪悪感なく食事を済ませたい』と思う20~30代単身女性に着眼し、開発を進めていったわけですが、当初は夜遅い時間に健康に気を遣いながらも、罪悪感なく食べられるカレーがどのようなものか見当がつかなかった。ターゲット層の食事事情の悩みを掘り下げるために定性・定量の調査を行ったり、身近な声を拾いにいくために周囲の社員にもヒアリングしたりしました。ある程度の方向性が定まるまで、1年はかかったと思います」
消費者の声を参考に、夜遅い時間帯でも気兼ねなく食べられるカレーを追求していった結果、「ポタージュ仕立てのカップ入りカレー」に行き着いたそうだ。