大企業で相次ぐビル売却。エイベックス、電通、HIS…それぞれの懐事情
多様な働き方を進める電通
電通も本社の売却を検討しています。日本を代表する一流企業ですが、2013年に英広告大手イージスを約4000億円で買収するなど積極的な海外政策を進めた結果、図体が少し大きくなりすぎたきらいがあります。それは利益を総資産で除した総資産利益率によく表れています。
通常は純利益で出すことが多いですが、有価証券売却益などの本業とは関係ない影響を受けてしまうため、ここでは営業利益を使います。総資産利益率は会社が保有する資産すべてを使って、どれだけ稼いでいるのかを見るものです。競合他社の博報堂と比較します。
なお、電通は国際会計基準であるIFRSを採用しています。日本基準に合わせるため、「その他の収益」と「その他の費用」の影響を外して算出しています。
両社が新型コロナウイルス感染拡大の影響を全く受けなかった2018年12月期と2019年3月期の数字の違いに注目してください。電通が3.1%、博報堂は7.2%です。博報堂は総資産を活用して電通よりも稼いでいることがわかります。
電通の総資産は博報堂の3.6倍まで膨らんでいます。組織が肥大化しているのです。本社の売却は固定資産を圧縮する理想的な方法です。また、電通は人員のスリム化も進めています。営業や制作などとして働いていた40代の社員2800人を対象に募集をかけ、2021年1月から社員230人を個人事業主に切り替えました。
このように電通は働き方を改める姿勢を明確に打ち出しており、本社の売却もリモートワーク推進などの働き方改革の一環とみることもできるでしょう。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>