原因は「盛り土」以外にも…熱海・土石流の対応が遅れた“本当の理由”
行政は「盛り土」の危険性を提示すべき
今、問題視されている上部にあった「盛り土」に関してだが、この許認可したのは行政である。こうした開発と地域の安全を担保するにあたり、行政はこうした「盛り土」におけるリスクをハザードマップに反映させるか、危険性情報を住民へ提供すべきである。
しかし、許認可した側の行政が「盛り土」などをリスクとして示すと、「リスクがあるのになぜ許可したのか」いう指摘がなされるだろう。そのため、人工的な開発部分をハザードマップへ落とし込む作業は、全国的にもなされることが少ない。今後は必要な安全対策とともに、住民へのリスクをきちんと提示されるべきだろう。
また、開発された土地がその後、どのような処理をされているかについて、行政の監視は限りなく緩い。私は今、北海道在住だが、観光産業を中心に、無秩序に投機で土地を購入する傾向が強まっている。開発がされてもその後、土地が地域に対してどのような影響を及ぼすかなど関係なく、許認可されているのが実情だ。
しかも、開発後に業者が倒産や、権利の移譲など複雑化するなどして、「手がつけられない」状態になっていることも多い。今回の熱海の土砂崩れは、こうした無秩序な開発に関する警鐘でもあると思う。
災害対応の不慣れさが明確に
熱海市はこれまで大きな自然災害は発生していなかった。もちろん過去を振り返れば、伊豆半島一帯で死者・行方不明1000人以上を出した狩野川(22号)台風もあったが、これは1958年の出来事。だからこそ今回の土砂崩れで見えてきたのは、熱海市自体の災害対応の不慣れさである。
先述の固定・非固定住民の把握、在宅避難者の把握と支援のみならず、初期段階の指定避難所における設備・物資のなさは、多くの避難住民が指摘をしていた。加えて、コロナ禍でありながらパーテーションもないなど、危機管理体制が脆弱だった。
その後、民間のホテルを活用し始めたが、マンパワーと保管場所が不足し、2021年7月7日「支援物資を遠慮する」と発表した。こういう場合は現金による支援が最も楽なのだ。この課題はかつて、1993年の北海道南西沖地震で、奥尻町がとても苦慮した話が有名だ。それから30年近く経って、似たような話を聞くとは、正直考えもしなかった。
避難所運営のことも同様だが、支援物資が送られてくることは、当然予想できたはずだ。初期の段階から、「必要なものは何か」を提示し、不必要なものの送付は受付けないような対応を初期段階から行わないと、限られた行政職員がその仕分けと保管に追われて、被災者の支援が滞る。