「おみそならハナマルキ」社長に聞く、コロナ禍の新食生活「大きな変化が起きている」
海外の一流シェフも注目する品質
さらに、液体塩こうじは国内のみならず海外からも注目を集め、グローバルでの支持も獲得していった。
「当社の海外の営業部門が、味噌を商材として提案しても、現地のバイヤーしか掛け合ってくれなかったのが常でした。ただ、液体塩こうじを持っていった際は、研究所の所長クラスの担当者が話し合いの場に出てくるほど、商品にものすごい興味を示してくれた。
こうじに含まれる酵素には肉や魚といった食材のうま味成分を引き出す特徴があり、それが食のバイヤーやレストランシェフの目に留まったことで、海外でも広まっていきました。2018年9月には世界の台所といわれるタイのサイアムに液体塩こうじを製造する工場を設立し、海外マーケットのさらなる拡大に努めています」
2020年から続くコロナ禍で世の中の消費志向やライフスタイルは変化したが、経営者として日々市場を見据える花岡氏は、苦しい状況をどう打開していくのだろうか。
「いろいろと模索中で、まだ安定はしてこないだろうと捉えています。当社は味噌や液体塩こうじといった家庭用商品を扱っていますが、ステイホームが叫ばれて以来、外出する人が少なくなった。スーパーやコンビニの客足が沈めば、売り上げが下がり、復調してくれば売り上げも回復するなど、なかなか落ち着きどころが見えないのが正直なところです」
何事もやり続け、信念を持って取り組む
「ひとつ考えたいのは、コロナ禍のような大きな有事が生じた後で、食生活に大きな変化が起きていること。1995年の阪神淡路大震災の時は、災害支援として即席味噌汁の提供を行ったのがきっかけで、お吸い物が好まれる傾向にあった関西地方の味噌の消費が増えた。また、2011年の東日本大震災では、停電発生時のエアコンが効かない状況下で時短調理や外食需要が高まった。コロナ禍では人との接触が減り、リモートワークが一般化するなか、どのような食生活の変化が起きるのかはまだ読めないところですね」
まだまだ不安は続く状況だが、花岡氏は「何事も将来は必ず結果が出ると、信じてやり続けることが大切」と語る。最後に、今後の展望や「bizSPA!フレッシュ」世代の読者へのメッセージを聞いた。
「一度スタートした事業はすぐ諦めない。育てていく意識が何よりも大事です。液体塩こうじの事業も、初めは『本当にこんなもの売れるのか』と懐疑的に思う社員もいました。でも、店頭やイベントに出向いて宣伝したり、商品の魅力を必死に伝えたりすることを繰り返すうちに自信につながり、やがて社内全体が盛り上がってくる。
失敗したことや売れないことを嘆く声よりも、『こうしたら売れた、反響があった』という声が次第に増えていきました。このように、ひとつの目標を定めたら、腐らずに前へ進んでいくこと。そして諦めず、一所懸命になって取り組んでいけば、活路を見いだすことができるのではないでしょうか」
<取材・文・撮影/古田島大介>