大坂なおみの会見拒否が「自分勝手な行動」では決してない理由
連日メディアを賑わせている、テニスの大坂なおみ選手の全仏オープンの棄権とうつ症状の告白。6月18日には、ウィンブルドンの欠場と東京オリンピックへの出場意思を表明した。
東京大学中退の経歴で、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(44)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。
大坂選手の行動は社会にどういった影響を与えるのか。われわれ日本人はどう捉えるべきなのか。前回に引き続き、ダースレイダーが解説する。(以下、ダースレイダーさんの寄稿)。
大坂選手の行動は“制度の間違い”を示した
大坂選手の記者会見拒否に関して「ルールに従って、事前に手順を踏んで許可を取ってから休め」という反応がありますが、これは基本的には制度を変えないで特例措置が取られるという前提に立った考え方です。
これでは当然、制度は変化しないわけです。大坂選手は、制度そのものが間違っていることを指摘したかったわけで、その制度の間違いを指摘するためには、その制度が何を強いているのか、何が間違っているのかを可視化する必要があります。そういった意味では、今回みたいにメッセージを出して、外に見える形で指摘する必要があるんですよね。
日本社会の人は、こういった行動を嫌がるというのもすごく可視化されたと思います。制度の外に出て「ここがおかしい」と言う人に対して「いや黙って従え。みんな従っているんだ、なんでお前だけが勝手なことを言うんだ」というメンタルを持っている人が多い。それが今回、可視化されました。
制度自体が持つ暴力性が可視化された
「事前に言っていたら」ではなく「事前に言わず」に記者会見をボイコットしたら、実際にどういう反応、バックラッシュが起こるかということは、大坂選手も当然わかっていたはずです。
だからこそ、事前にそういう人たちに向かって説明してはいけないということになる。そういった言い訳のポイントを作ることによって、制度自体が持つ暴力性が可視化されなくなってしまう。だから事前に言っていないんです。
事前に言っていたら、大会主催者が罰則を強いてきて、さらに他の大会にまで出るなと言ってくるということは引き出せないわけです。そういった態度をとっている人たちが作った制度であり、そういった考えに方に基づいてアスリートたちを管理しようとしていることがわかったわけです。
そして、そういった外側の視点を持ち込めるかどうかこそが、歴史が変わる瞬間なんです。中にいる人はなかなか気づかない。だからルールに従って粛々と行動していても制度の問題には気づけない。