「もっと政治家を利用して」福岡市長が“挑戦したい若者”に送る言葉
もっと政治家を利用してもらいたい
――書籍では「若者の一票を高齢者の一票よりも重くする」という、思い切った提言もされています。
高島:若者は自分たちが相当まずい状況に追い込まれていることに一刻も早く気づくべきです。この国では若者の意見は通らず、世の中のツケだけを全部背負わされているといっても過言ではありません。コロナ禍で多額の税金が使われ、国の借金も膨れ上がっていますが、それを支払うのは一体誰だと思いますか? 現役世代ですよ。
一方で、日常生活では、自粛を迫られ、時短営業を余儀なくされ、収入は減る一方です。学生たちも人生の大事な時期に海外どころか国内も旅行できず、見聞を広めて、刺激を受けて成長につなげることもできない。仮に、それを選挙で拒否するために、若者全員が反対票を投じたとしても、絶対数で高齢者の方が多くなってしまった現状では勝てないんです。
スタートアップにおいても、若者は「良い製品・サービスを作れば、喜んで受け入れてもらえる」「非合理なものは自然に淘汰されるはず」と思っているかもしれませんが、それはある意味正解ですが、ある意味間違いです。もちろん良い製品・サービスでなければユーザーに受け入れられませんが、それらを社会に実装できるようにするかどうかを決めるのは政治や行政なんです。
既得権者たちは、その仕組みをよく理解しているため、自分たちの利益の代弁者となる議員を支援し、自分たちのビジネスが脅かされないよう、常に制度をメンテナンスしています。若者は政治ってドロドロしていて、面倒だし、関わりたくないと思っているかもしれませんが、その無関心が、結果的に既得権者を利することとなっています。むしろ、自分たちが望む未来を勝ち取るため、もっとしたたかに政治家を利用してもらいたいですね。
アントニオ猪木の著書がきっかけで政治家を志す
――政治家を利用してほしいという発言がありましたが、ご自身はなぜアナウンサーから政治家に転身したのですか?
高島:きっかけは高校1年生の時に勃発した湾岸戦争です。当時、アントニオ猪木さんがイラクで人質になっていた日本人を解放しましたが、そのことを『たったひとりの闘争』という本に書かれたんですね。
私はプロレスが大好きだったので読んでみると、猪木さんがモハメド・アリと戦った後にイスラム教に改宗していて、それでサダム・フセインと直接会うことができ、人質を解放したことが書いてありました。テレビではアメリカが正義、フセインは悪みたいなニュース一色でしたが、ちょっと実態は違うのではないかと感じ、中東でなぜ戦争が起きるのかに興味を持ちました。それを自分の目で確かめたくて、大学生の時に中東に行ってみたんです。
ガザやヨルダン川西岸にも行ったのですが、そこには自分の“国”がないパレスチナ人が住んでいました。彼らとアラビアコーヒーを飲みながら車座になって話をして、国がないと国際社会で発言権もないこと、国の存在意義を強烈に感じたんです。それで将来は故郷である日本をより良くして、次の世代に繋げられる政治家になりたいという思いが強くなりました。
でも、やりたいことを実現するには選挙に強くなければいけない。そのために、まずアナウンサーになったんです。父がアナウンサーで、祖父が政治家だったことも影響しているかもしれません。医者の息子が自然と医者を目指すように、自分の中ではアナウンサーも政治家も特別なものではなかったんです。