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『ボヘミアン・ラプソディ』を深く読み解く“6つのポイント”。屈指の音楽映画となった理由

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3:ライヴ・エイドで肯定されること

 時には過ちを犯し、ゲイへの偏見のために苦しみ、そしてエイズにも感染してしまったフレディの人生は、クライマックスのライヴ・エイドの演奏で、はっきりと肯定されます

 例えば「Bohemian Rhapsody」はリリースされた時にマスコミから「不可解な歌詞」「冗長で無意味」「詩的でない」などと酷評されていましたが、この物語を追ってきた後では、(前述したように史実とは違いますが)エイズに罹患し死期を悟ったフレディの心境にシンクロしている、はっきりと意味がわかるように感じられるのです。

「ママ、悲しませる気はなかった。明日の今ごろ、俺が戻ってこなくても、何もなかったように生きていってほしい」「君たち皆と別れ、現実に向き合わないと」などなど……それは一見するとネガティブな歌詞にも見えますが、すでにフレディがこの世にいないことを想うと、彼からの「俺がいなくても悲しまずに元気に生きていってほしい」という、永遠に続くエールにも思えるでしょう。

 また、続いて歌われる「Radio Ga Ga」というラジオファンの人を鼓舞する曲では、「ラジオから流れるのはまるで意味のない言葉」などと歌われていました。それは、「Bohemian Rhapsody」が6分と長いため、ラジオで流すことを危惧されたこと、「意味不明」と酷評されたことへ自虐も少し込めつつも、やはり楽曲そのものの肯定の意味にも捉えられるのです。

4:「ビスミラ」の意味とは?

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 ライヴ・エイドの演奏では出てきましたせんでしたが、「Bohemian Rhapsody」の歌詞には「ビスミラ(Bismillah)」という単語が登場し、中盤でレイ・フォスターにも「ビスミラってなんだ?」問われていました。

 ビスミラの意味は「神の名において」であり、主に「善行」を始める前にイスラム教徒によって使用される言葉です。ここで思い出すのは、フレディの両親が(イスラム教など様々な宗教に影響を与えた)敬虔なゾロアスター教徒であり、父が「善を思い、善を語り、善を成す」ことを信条としていたこと。ライヴ・エイドに挑む前、フレディはそれを「全部父さんから教わったことだ」と肯定しています。

 つまりビスミラとは信仰そのもの、ひいては「善を思い、善を語り、善を成す」父から受け継いだ想いそのものでもあると解釈できますし、アフリカ難民救済を目的するライヴ・エイドという、大いなる善行を予見した言葉とも言えるのです。

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