0.5%「微アルコール」が誕生。アサヒビールの“社外から来た専務”が熱く語る
“微アルコール”という新カテゴリーに活路
その後、チバビジョン、再び古巣のサトーホールディングスの社長を経て、2018年9月にアサヒビール専務取締役 兼 専務執行役員に就任。同社が外部から役員を迎え入れるのは32年ぶりという、異例の抜擢人事だった。
松山氏のマーケティング哲学には「主役は商品ではなくお客様」という考えが貫かれている。2021年3月末にはアルコール度数0.5%の“微アルコール”という全く新しいカテゴリーから「アサヒ ビアリー」を世に送り出した。
世界的な潮流になっている「ノンアルコール」や「ローアルコール」需要を受け、松山氏は「アイディア自体は2年半前から構想していた」と背景を説明する。
「ノンアル・ローアルコール市場は日本含めアジアでは欧米ほど伸びていないのですが、欧米諸国では若者を中心に拡張しているんです。アサヒビールとしても、海外の潮流を汲む形で2019年からアルコール度数ゼロ%を前提としない、商品の開発を行っていました。
独自の製法である『脱アルコール製法』を用いて今までにない劇的に美味しい味が実現できないものかと思いながら、何度も試行錯誤を繰り返したところ、たまたま“0.5%”で美味しい味になったんです(笑)。試しに社内で飲んでもらったところ、『商品化しないともったいない』というくらい評判だった。それが、本腰入れて乗り出したきっかけですね」
“飲み方”の多様性を提案する
また、微アルコールというカテゴリー名も、消費者の声を参考に命名したという。
「0.5%という現在市場にほとんどないアルコール度数だったので、カテゴリーをどう表現しようか思い悩んだんですね。ヒントになったのは消費者の『ノンアルじゃなくて、アルコールがちょっと入っていると思うと、何となく気分が上がる』という声。そこから微アルコールというカテゴリー名が生まれました」
世界中を襲ったコロナ禍も、消費者の価値観やアルコールに対する需要の変化を生んだ。
「今までアルコール度数は“0%”か、“5%”しか選択肢がなかった。それ以外の商品を出せば、消費者の求める多様なニーズにも応えられるのではと考えたんです。普段飲まない人も、また飲めない人も“微アルコール”なら美味しく飲める。まだ市場にはない新カテゴリーゆえ、まずは『スマートドリンキング(スマドリ)』という“飲み方”の多様性を提案し、シーンに応じた驚きやワクワク感を訴求できるよう意識しています」