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0.5%「微アルコール」が誕生。アサヒビールの“社外から来た専務”が熱く語る

ビジネス

留学してMBAを取得後、マーケッターとして

 松山氏は、最終的にマレーシア工場の副工場長まで務め、順風満帆に海外でのキャリアを積んでいた。しかし――。

「30代に差し掛かり、学生時代にディベートをしていた頃から、ずっと憧れだった『米国のビジネススクールで学びたい』と思うようになったんです。本場欧米のビジネスに対するセオリーや取り組み方を、自分の将来に活かせればと留学をすることに決めました。シカゴにあるノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院では2年間、ビジネスのフレームワークや考え方、捉え方などを学びました」

 マーケティング、アカウンティング、ファイナンス、MBA。ビジネスの根幹となる知識を体得し、再び会社員として返り咲いた先はグローバルカンパニーのP&Gだった。「マーケティングを志すものとしてP&Gで働いてみたいと思っていました。P&Gでの経験はひとつのターニングポイント」と松山氏は振り返る。

「6年間、ヘアケアを担当するマーケッターとして従事しましたが、実は初めて担当したブランドで大失敗してしまったんです……。海外では人気の高いブランドだったんですが、日本の消費者からはいい感触を得られず、中身もパッケージもコミュニケーションも全面的に刷新しようと分析や調査を行いました」

机上論に傾倒してしまい、苦い経験も

アサヒビール

 幸いにも、発売前の事前調査では消費者から好評の声も多く、松山氏は「これで市場も活性化されるだろう」と安堵していた。しかし――。

「いざ発売してみると、全然売れなかった。実際に現場のお店をいくつか回ってみても確かに売れ残っているんです(笑)。そのブランドはその後、終売商品となってしまった。私のビジネス人生の中でも、辛酸をなめた経験として今でも忘れられません」

 従前の商品と比べ、リニューアルした商品は事前調査でも評価が高かった。テスト段階で好評だったのに、なぜ実売に結びつかなかったのか。松山氏はあることに気づいたという。

「素晴らしい商品だったんですが、今思うと、メーカー(売り手)の視点だけで捉え、自分たちの思いだけで進めてしまっていた。マーケティング理論が先行してしまい、消費者(買い手)の視点をないがしろにしていたんです。

 事前調査には『今までのイメージとはかけ離れている』『私の求める商品ではない』という声も一部出ていたのに少数として気に留めず、足をすくわれた。『良い商品なら必ず売れるはず』という“メーカーの独りよがり”は通用しないんだと思い知らされましたね。この失敗があったからこそ、消費者の声やインサイトに注目し、消費者起点に立った捉え方をするようになりました」

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