VAIOは分離、レグザは中国資本に。意外と知らない“家電ブランド”の現在
「ジャパンディスプレイ」って何?
それぞれ採算性が悪化していたソニー・東芝・日立のディスプレイ部門を統合してできたのが「株式会社ジャパンディスプレイ」。旧3社の液晶パネル製造を存続させるべく、産業革新機構の主導で“事実上、国策”によって作られた事業体である。
長らくiPhone向けパネルの大部分を製造してきたが、有機ELでの移行で韓国・中国勢に遅れをとったこともあり、経営が悪化。さらには2015年度から2018年度までの3年間に有価証券報告書などに虚偽の記載をしたとして、2021年2月26日に金融庁より課徴金21億円あまりの納付が命じられた。
ジャパンディスプレイの系譜に載る各社とも、もともとは強力な自社ブランドを擁し、必要に応じて下請けを使う立場であった。それが今日ではAppleの製品開発によって屋台骨が左右されるのだから、時代の移り変わりを感じずにはいられない。
「消滅したブランド」は量販店にも
大手以外のメーカーやパーツメーカー等も含めれば、消滅したブランドは枚挙にいとまがない。たとえば日系のDRAM(揮発性メモリ)製造3社を糾合した「エルピーダ」ブランドも、2012年に消滅している。家電といえば、メーカー以上に栄枯盛衰が著しいのが量販店である。平成年間に店名を消した家電量販店を挙げれば、10や20ではきかない。
有名所では「サトームセン」や「石丸電気」がそうだし、新宿3カメとして鳴らした「さくらや」もなくなった。「ムラウチ電機」や「でんきのセキド」といった、ロードサイドの中堅チェーンも消えていった。パソコン歴が10年以上という人に限れば、最初にパソコンを買った店が、当時の店名のままで健在というケースは稀だろう。
「ブランドが消滅」と聞くと、どうしても寂しい気持ちになる。VAIOのように独自の発展を遂げている例もあるため、一概にどうこうは言えないものの、日の丸製造業の衰退を嘆く感傷はやはりあるだろう。とはいえ新興メーカーの圧迫を受けているのはどの先進国も同じなわけで、ブランドの収斂というのは、工業先進国に共通する現象ではないだろうか。
<TEXT/ジャンヤー宇都>