4日間一睡もできない…映画業界の新人が体験した“ブラック現場”
「若いときの苦労は買ってでもせよ」。こんな言葉がありますが、最近では働き方改革の影響で、聞く機会も少なくなってきたように思います。
ですが、映像やマスコミのような一見華やかに見える業界では、「好きなことをやってるんだから、若いうちは仕事がハードでも修行と思え」という風潮が残る職場もあるようです。
美大を卒業し、夢だった映画スタッフに
学生時代から、ミニシアターや名画座に少しマニアックな映画を観に行くのが好きだった松田唯さん(仮名・28歳)。彼女は、美大で芸術史や、映像制作を学んだあと、念願の映画スタッフのキャリアをスタートさせました。
「この業界は、知り合いのツテなどで仕事を紹介してもらうケースが多いらしいのです。私は大学の先輩の紹介で、とある中規模の邦画に小道具などを準備する美術スタッフとして参加することになりました。自分がいつも通っていた映画館で上映されることが決まっていたので、台本を貰ったときに、胸が高まったことを覚えています」
しかし、唯さんを待っていたのは、想像以上にハードな現場でした。
やりがいと引き換えに、寝る間もない日々
「映像業界は、徹夜が続いたり、ハードだという噂は聞いていたので、覚悟はしていました。でも実際は、想像以上でしたね……(苦笑)。撮影が深夜どころか早朝までかかり、そのまま一睡もせずに翌日の撮影が始まることを『つながる』と言うのですが、ほぼ4日も撮影がつながりました……。若さでなんとか乗り切ったのですが、一睡もできずふらふらでした」
それでも、撮影前に準備した小道具や、出演者が身に着ける時計やバッグなどの衣装の一部が現場で使われているのを見て、やりがいのある仕事だと感じたそう。
「映画は、形に残るので仕事の楽しさや、やりがいは感じられました。ただ、それを上回るほどの現場だったんです。地方ロケだったので、唯一の楽しみはご飯だったのですが、ロケ地に飲食店がないため、用意されたお弁当を食べるしかありませんでした。それなのに、毎日弁当がのり弁だったんです……。のりもべちゃっととご飯についていて、美味しくない……のり弁を見るとつらかった撮影を思い出すので、しばらく食べられなくなりました…」