海外就職した20代男のトンデモ行動。従業員を「馬鹿1号、2号」とあだ名で
海外で就職したのは日系企業
そして、田川くんは日本から就職先をベトナムに見つけました。それはホーチミン郊外にある工場でした。しかし、彼は複雑な気持ちで勤務初日を振り返ります。
「会社は日系の高級家具メーカーで、仕事は工場の生産管理者です。出社初日がクリスマス・イブだったので、僕は工場で働くベトナム人工員たちを喜ばせたくて、サンタクロースの衣装を着て出社しました。ただ喜んでもらいたかっただけなのに……」
ベトナムの工員たちはサンタクロースに扮した田川くんの姿に、歓喜の声をあげ、全員笑顔だったといいます。しかし、それを見た、日本人上司の反応だけは違いました。彼の上司は「そういうのいらねーから。社内で何かやるなら、まず上司の俺に聞けよ? 初日から余計なことをするな」と言い放ったのです。
田川くんは、そこまで怒る上司のことが理解できなかった様子。「なぜあんなにブチ切れるんですかね? 僕はただ人を喜ばせようとしただけなのに。良いことをした人間に対して、そんなに怒らないとダメなのか?」と、本気で憤っていました。
素直に上司に相談できない
ホウレンソウ(報告・連絡・相談)という言葉があるように、一般的に組織のなかでは何事も上司に相談することが必須とされますが、なぜ上司に相談しなかったのか? 当時の心境を、田川くんに聞いてみました。
「サプライズを行う前に誰かにそれを言うと、それはサプライズではなくなります。だれも知らないからこそ、サプライズは成立するんです」
また、工場で働くベトナム人工員たちを管理する立場であった田川くんは、日本人のみならず、ベトナム人工員たちからも恨まれることになりました。
「同じことを3回言っても覚えない人間を僕はわざと馬鹿呼ばわりして、彼らを叱ったんです。彼らを悔しい気持ちにさせてやる気を引き出すためです。教育です。中でも特に覚えの悪い工員が3人いて、彼らを馬鹿1号、馬鹿2号、馬鹿3号と名づけました。仕事を覚えたら本名で呼んでやるという条件です。それを1か月ほど続けたころ、仕事を終えて工場を出たときに彼ら3人から出待ちされて襲われました。僕を恨んでいたのでしょうね……」
そう話す彼は、反省した様子はありませんでした。田川くんはただただ仕事の効率を重視して、職務における彼なりの正義を実行したつもりなのです。