ミャンマー軍事クーデターで「米中対立」は悪化するか。日系企業にも影響
日系企業や邦人への被害も
一方、近年、ミャンマーへの日系企業の進出は増加し、ミャンマーは新たなフロンティアとして注目されてきた。2012年には全日空が関空―ヤンゴン線以来、12年ぶりの直行便を運航させるなど、両国の経済関係は確実に緊密化してきた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2020年12月時点でミャンマーに進出する日系企業は433社に上り、近年は増加傾向にある。幸いにも本稿執筆の現在のところでは、現地の日系企業や邦人への被害は報告されていない。
クーデターによって日本権益が直接のターゲットになることはないが、電話やネット回線へのアクセス制限、夜間外出禁止令の発令、公共交通機関の停止のような、日常生活で制限が出るかもしれない。
また、日本の外務省も不要不急の外出を控えることを呼び掛けているが、仮に今後情勢が悪化すれば、抗議デモや暴動と、治安が悪化して、それに巻き込まれる危険性は十分にある。
日系企業や邦人への被害はまだないが…
ミャンマーにもテロや犯罪のリスクはあるが、米国や欧州、アフリカと比べて決して高いわけではない。だが、ミャンマーも含め発展途上国の中には政治制度や法の支配が脆弱な国も多く、いきなり情勢が不安定化するリスクは常にある。
このクーデターが長期化した場合、ミャンマーや東南アジアを巡る米中の対立がよりいっそう高まる。ミャンマーに進出する日系企業はより注意が必要だろう。
そして、今回のような事態が発生するリスクはミャンマーだけでなく、他の国々でも今後十分に起こりえる。世界各地に進出する企業や日本人は、今回の事態を教訓とすべきだろう。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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