三浦春馬さん遺作『カネ恋』が描く、20代のお金と恋愛。生活は質素だが“推し”には散財
完璧な玲子に見えた一瞬のほころび?
玲子と慶太、そして板垣に加えて『カネ恋』の重要なキャラクターとなるのが、玲子が「昔通っていたテニススクールの先輩」だという早乙女健(三浦翔平)だ。彼は「お金の専門家」としてテレビ番組でもコメンテーターを務めるイケメン男子という役柄で、玲子は彼の講演会に足繁く通うファンだった。
第1話のラストでは、清く質素な生活を送っているはずの玲子がその早乙女にとんでもなく貢いでいることが明らかになる。慶太のお金づかいの荒さにあれだけイライラしていた玲子が、早乙女にはチョコやワイン、安眠グッズなどをたっぷりと進呈……。
「そういうことか……」と納得してしまった人も多いかもしれない。玲子は好きな人、この場合“推し”のような早乙女の前では散財することを止められない人だったのだ。
もしかすると、ずっと一途に片思いしてきた彼がお金の専門家であるからこそ玲子はお金の扱いに人一倍気をつけ、節約へと一心に励んでいるのかもしれないとも想像できてしまう。
しかしこれもまた、現代人の消費の現実なのだろう。我慢するところでは我慢し、“推し”や“好きなもの”には最大限のお金を投資する。営業部の板垣は、お金に悩んでいることをすんなり受け入れてもらうことによって玲子に心惹かれていった。そして慶太もまた、自分とは正反対ではありながらしっかり人間らしい一面も見えた玲子が気になっていく。
「お金」と「恋」にはなんらかの相関関係がある。玲子と慶太を中心とした、第2話以降で描かれていく『カネ恋』の物語にも要注目だ。
<TEXT/原航平>