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「日本は一度ぶっ壊れたほうがいい」ダースレイダー×映画監督・原一男

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 東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)この連載では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。

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 今回は『ゆきゆきて、神軍』(1987年)、『全身小説家』(1994年)など、過激なドキュメンタリー作品で知られ、9月11日にはれいわ新選組の2019年参議院選を追った新作『れいわ一揆』がアップリンク渋谷にて公開されたばかりの原一男監督(75)を迎え、対談を行う。

 2回にわたり公開する対談。前編では「優生思想」について語ったが、後編となる今回は、日本の制度や国民が抱える課題について語ってもらった。

日本の制度は“国民を統制するための装置”

原一男(以下、原):日本は都合のいい制度ばかり、ずっと作ってきたんじゃないかなって思えてならないんですよね。私たちが脳性マヒの人たちにカメラを向けた『さようならCP』で、横塚晃一さんという男性が、同じく脳性マヒの奥さんとの間に娘が産まれたときに映画の中でこう語ったんです。「自分の娘が成長した姿を想像するんだけど、脳性マヒ特有の不随意運動を持っている女性ではなく、健全者の女性が長い髪をなびかせて歩いているイメージをどうしても持ってしまう」と。

 さらに、横塚さんは映画のあと、ボランティアの女子大生と不倫した。やっぱり男として健全者の女性とセックスがしたいという性的欲望があったんだなと。障害者の持っている、そういう根本的な欲求まで解き明かして制度ができているかというと、そうではないですもんね。さまざまな制度は結局、国家が国民を統制するための装置にすぎないのではないかと思います。

ダースレイダー(以下、ダース):日本は建前上は民主主義国家なわけで、国家が統治するための制度は、主権者である国民の意見が反映されてたものであるはずです。だけど、そもそも日本は国民が何も考えていないから、その上に乗っかる国家も何も考えていないという悪循環になっている。

 そもそも、日本には僕らの実感が反映された制度があるのかって話。その“僕ら”に、障害を持つ人など、多くの人にとっての“他者”の人たちは入っているのか? とか。それすらもモヤッとしている。その程度の国民が考えた制度なんてしょぼいに決まってるんですよ。

:その程度の、か! 本当にそうだ(笑)。

ダース:国民の声が反映された制度が国によって考えられるっていうのが正しい順番なわけで、そういう意味では『れいわ一揆』は、1つのあり方を提示した映画だと思う。

 でもそれは、スタート地点でしかない。れいわ新選組が声高に言っていた「庶民の人々の声を拾って国会に持っていく」、こんなのは当たり前にやっていなきゃいけなかったことなんですよ。それをやっているだけの人たちに、こんなにも熱狂してしまうという悲しさもあります。

“れいわ新選組の熱狂”は何だったのか?

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リモートで対談を行った

:1年前の参院選でれいわ新選組が、重度身体障害者や元派遣労働者のシングルマザーなどを擁立し、「当事者たちを国会へ」と言っているのを聞いて、私は本当に「その通りだ!」と思ったし、同じように思ってれいわを応援しようとした人はたくさんいたと思います。あれから1年経って、いろいろな問題が起きて、Twitterでは「山本太郎に騙された」という声すらある。

 それを見て「違うな」と思ったのは、あの熱狂の中に、確かにあなたもいただろうと。もちろん私もいた。あなたはそれによって刺激を受け、納得したから支持しようと思ったんでしょ。感動したあなたがいたという実感を、あなた自身が消してしまったら本当に意味がないでしょう、と。

――原さん自身も、れいわ新選組に熱狂していた一人なのですね。

:れいわ新選組が起こした熱狂は民主主義の“リスタート”って感じがしたんですよ。私は1945年生まれなんですが、戦後、教育制度で民主主義というものを国民にインプットしていく時間の流れと共に成長してきたという感じがあります。でも、大人になるにつれて「あれ、本当の意味で民主主義は日本人に根付いていないんじゃないか」という疑問が渦巻いてきたわけです。だけど、あのれいわの参院選は、民主主義に対する問題提起としてはよかったと思っています。でも1年たってみると「なんだこれは……」って。

 もうこうなったら、れいわ新選組がどうのこうのじゃなくて、あの時、あの渦の中にいた“一人ひとりのれいわ一揆”として考えなくてはいけないんとちゃうかっていうのが私の思いなんです。

ダース:『れいわ一揆』は解決する映画ではなく、スタート地点の映画。要は「自分で考えろ」ってことじゃないですか。

:私たちの映画はずっとそうですね。

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