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19歳になった「子ども店長」加藤清史郎が、“一人の俳優”として考えたこと

暮らし

頑張れることの素晴らしさに気づいて

加藤清史郎

――よく覚えている出来事などはありますか?

加藤:亡くなったおじいちゃんのお別れ会のシーンがあって、みんなで歌うのですが、マサオが参加したところで脚本は終わっているんです。撮影には実際に仮設住宅に住まわれている方々がエキストラで参加してくださいました。太賀さんのアドリブに次ぐアドリブのおかげで本当に盛り上がって、カットの声も聞こえずに、そのまま続けていたら本編に全部使われていました。

 パワフルにその場を引っ張っていく姿を見て、本当にすごいなと思いましたし、役としてのバランスもすごく上手で心を動かされました。そうしたお芝居ができる俳優さんになりたいと、強く思いました。

――完成した作品に感じたことを教えてください。

加藤:生きているとどうにもならないことにぶち当たることってあると思います。今は特に全世界の人が、どうにもならない状況に置かれてしまっています。その中でも頑張れるってすごいこと。劇中で出てくる僕らの笑顔は偽りのないものです。それは頑張れることの喜びとか素晴らしさに気づけたからかなと思います。

イギリスでは劇場での観客の姿勢が違っていた

加藤清史郎

――高校時代の3年間、イギリスに留学していました。将来、役者としてやっていくために演劇を学ぼうと思ったからだと。留学したことで得たことを教えてください。

加藤:まず役者として、個人レッスンも受けましたがアクターズスクールに通えたことはすごく大きかったです。役を作るうえで、今まで自分のなかで曖昧だったことを明確にできました。具体的には「ふりをするな」と言われたんです。その人のふりをするのではなくて、「その人の中に住め」と。その言葉を聞いてすごく腑に落ちました。それからイギリスに行ったのは、ウェストエンドのミュージカルを観たかったからでもあります。実際に観に行ってすごく驚きました。

――驚いた?

加藤:はい。当然、ミュージカルや役者の表現力についても学びましたが、それよりも、観劇している人の意欲の違いに驚いたんです。エンターテインメントが人々の間にすごく根付いている。観劇の仕方も自由で、立ち上がったり叫んだり、カーテンコールでは踊ったり。とにかく自由で積極的なんです。それって作り上げてきた文化の歴史が大きい。博物館や美術館に無料で入れたりといった日常から、文化との距離が変わっていくんだろうと感じました。

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