東京メトロ03系がなぜ長野に?長野電鉄3000系デビューを追う
3000系の走行機器類は03系を極力活用
長野電鉄移籍第1陣の03系第4・8編成は、新製から30年以上を経過しているが、2012年から2013年にかけて、電車を動かすのに必要な制御装置を高周波分巻チョッパ制御からVVVFインバータ制御へ、乗降用ドア上に設置された旅客情報案内装置を3色LEDのままドット数を増やしたものに、それぞれ更新。2・7号車に車椅子スペースを設置するなどの簡易リニューアルを受けた。
今回の3000系はメトロ車両(東京メトロの関連企業)で改造され、03系の走行機器類、旅客情報案内装置、ドアチャイムなどは引き続き使用する。また、最高速度は110km/hから90km/hに引き下げられている。
3000系はモーターつき2両、モーターなし1両という組み合わせにするため、解体された03系の機器を活かし、旧03-800形を電装した。長野電鉄ではデハ3010形と名乗る。さらに電動空気圧縮機の新設、旧03-300・700形に搭載されていた補助電源装置の移設が行なわれた。
先頭車の前面は先述の帯色変更のほか、スカート(排障器)の装着、車両番号と運行番号表示器の撤去、行先表示器を幕式からフルカラーLEDに更新(すべての車体側面も含む)された。
ちなみに、長野電鉄は2006年に1000系ゆけむり(元小田急電鉄10000形HiSE)の導入を機に、称号規程の改正を行ない、モーターつきの先頭車を「デハ」、モーターつきの中間車を「モハ」とした。すなわち、長野電鉄のデハはJRグループの「クモハ」に相当する(クは先頭車、モとデは電動車、ハは普通車)。
運転台は03系のままワンマン運転対応に
運転台は基本的に03系時代のままながら、TIS(Train-control Information Management System:車両制御情報管理装置)の撤去、抑速ブレーキやワンマン運転の対応機器を搭載した。保安装置も同社用のATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)に更新されている。同社によると、ワンマン運転に関する対応として「車掌側でなく、運転士側で乗降用ドアの操作が行なえるようにした回路の改造」「自動放送の変更」などがあるという。
このほか乗務員室内にミラーを設置した。停車時に運転士が車内を監視できるよう、補助的な意味合いもあるという。なお、駅のホームにもミラーを設置しており、運転士は車内外の安全を確認してから発車するようだ。
同社はかつて、一部の車両に整理券発行機、運賃箱、運賃表が設置され、無人駅に停まると、運転士が車内で運賃を収受していた。現在は中野松川―上条間を除く無人駅に券売機が設置されたため、乗車券は運転士が直接回収、もしくは備えつけの収札箱に乗客が入れる方式としている。