24時間営業のジムが増え続ける理由。実は消費者心理を巧みに利用していた
幽霊会員はなぜ解約しないのか
しかし、幽霊会員がたくさんいるというだけでは本当はまだ不十分である。もう一歩踏み込んで、そもそも幽霊会員は「どうしてジムを解約してしまわないのだろう?」という疑問を持ってみるのが経営学的な視点である。
経営学者の疑問は次から次へと深まっていくという特徴がある。もちろんそこには様々な要因があると考えられるが、それらの中でどのような要因が大きいのだろうか。
真っ先に考えられるのは、「解約にもコストがかかる」というものだろう。このコストと目に見えるお金かもしれないし、目に見えない負担かもしれない。たとえば、解約の際には違約金がかかるというのは最も単純なケースである。
ジムは消費者心理を巧みに利用している
解約金のように分かりやすいものではなくても、解約の書類を書くのが面倒だとか、受付のスタッフと仲良くなってしまったので辞めるとばつが悪いとか、痩せると周囲に宣言したのでジムを解約すると気まずいとか、解約には経済的・心理的なコストがかかってしまう。
そのため、スポーツジムをあまり使わなくなっていてもなかなか解約まではいかないということもあるだろう。
さらに消費者心理にさらに踏み込んだ知見からの説明もありうる。消費者行動論とか行動経済学などといった分野がこうした研究に取り組んでいる。嘘のような話だが、人間はクレジットカードのマークを見たあとに支払いをすると、お金にルーズになりやすい。
実際にカードを使わなくても、アメックスやJCBやVISAのマークを見るだけで財布のひもが緩むのだ。通常のトレーナー常駐のジムに比べて、多くの24時間営業スポーツジムはクレジットカード決済を導入している割合が高い。消費者心理を巧みに利用しているといえるのである。