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経営者とうまく付き合う方法。花王がモデルの実名小説にヒントが

ビジネス

黎明期の花王をモデルにした実名小説

 もちろん、カリスマ経営者の下で働いている人にとってはさらに死活問題だ。突然取締役を任せてくることもあれば、ある日を境に二度と口をきいてくれないこともあるからだ。

 こうしたカリスマ経営者とのつきあい方を教えてくれるものとして、ここで取り上げるのは城山三郎『男たちの経営』である。1970年に発表された作品で、経済小説・ビジネス小説のはしりとしても知られている。

男たちの経営

城山三郎『男たちの経営』(角川文庫)※在庫品切れ

『男たちの経営』は知らなくとも、『官僚たちの夏』『落日燃ゆ』などを書いた直木賞作家として知る人は多い。なお、城山三郎が純文学の賞である文學界新人賞でデビューしていることは意外に知られていない。

 そんな城山三郎が取り組んだほぼ初めての実名小説、ノンフィクションと創作が入り混じった小説が、この『男たちの経営』。舞台は花王石鹸。主人公は花王の創業者である初代・長瀬富郎とその息子である二代目・長瀬富郎である

 初代・長瀬富郎は、日本的経営を突き詰めたような人だ。石鹸を文明の必需品と考え、粗製乱造の既存品を高品質な自社製品で駆逐しようとする。

儲かっている状態を悪とした二代目

花王

 広告のやりかたも、「顔を洗う」から「かおう」石鹸とし、学士の発明・医師の実験済みと書いてみたり、成分表に意味深な「企業秘密」の欄を作ったりと、きわどいことを次々と実行する。同時に、従業員を家族にように扱い、無料で食事を出すなど家族主義経営を徹底している。

 これに対して、神学を学んでいた二代目・富郎は理想主義的である。父の死とともに花王の社長となると、花王は「もうかりすぎる」といって大改革をおこなう。ビジネスは世のため人のためにあるとして、儲かっている状態を悪だというのである。

 ここに、“花王のラスプーチン”こと太田が加わり、社長から従業員へ定期的に「労働者諸君!」といった檄文が届く……。そうして徐々に社長信者を増やしていき、古参の社員は立場をなくしていく。

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