“事故物件住みます芸人”が生まれた理由「人が嫌がることにチャンスがある」
「事故物件住みます芸人」としての気遣い
――本を書く、もしくは怪談を語るにあたって、住んでいる物件や幽霊、読者に対してなど、いろんな気遣いがあると思うんです。松原さんがとくに注意しているのは、どんなところですか?
松原:僕、4人兄弟の末っ子なんで、人に怒られないように生きてきたんです。「悪口は言わないようにする」「納得できる理由でやっちゃいけないことがあったら手を出さない」とか。そういうのは、子どもの頃からなんとなく学習してきて。
事件・事故、幽霊とか事故物件を取り扱うようになってからは、「幽霊を悪者にしてはいけない」ってことに途中で気づいたというか。もともと幽霊も生きてたわけだし、怖いとされ、忌み嫌われているけど丁寧に扱うことで傷つくことがなくなるかなと。
そう思いはじめたら、僕自身が事故物件を怖くなくなってしまったんですよ。だから、怖さを伝えることに関しては弱くなっちゃったかもしれないですけどね。
あと、平等にするっていうのが大事ですね。「この神様をとくに大事にする」とかじゃなくて、どれもそこそこ尊敬していますっていう(苦笑)。そうすることで、心霊関係での争いも起きないのかなと。
自分で気づかないと人って変わらない
――幽霊に対しても気遣いがあるんですね。“生きている人”に対しては何かありますか?
松原:読者や関係者に対しては、場所を特定されないようにするとか、人から聞いた話を勝手にしないとかっていうのはありますね。「こういう理由があるので、こういう場面で話してもいいですか?」と、しっかりと了承を得てから出すようにしています。
――松原さんって、芸人の駆け出し当初に描いたイメージとは違った形で活躍されていると思うんです。芸人に限らず、若い頃の夢を果たせなかった人ってすごく多い気がして。今、まさにもがいている方に言ってあげられることってないですか?
松原:たとえば後輩の芸人が「テレビに出るために一生懸命ネタつくってます」っていうのを5年ぐらい続けていると。そこで僕が「いや、大阪のローカル番組のネタづくり続けてても、本当になにも変わらんで」って言ったとしても、意味なかったりしますよね。やっぱり自分で気づかないと人って変わらない。
個人的に「これじゃないとオレじゃない」みたいなことは、何個でもあきらめていいと思うんですよ。今の僕にしても、北野誠さんっていう人がきっかけをくれて、とりあえず保険の1個としてやってみたら道ができたって感じだし。保険をいっぱいつくっておくことで、そういう人がポンッと現れたりすることもありますからね。