中国発「新型肺炎」の感染をどう防ぐか?8つの疑問に医師が回答
中国湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルス(新型肺炎)が感染拡大しています。中国国家衛生健康委員会は1月24日、死者が25人、感染者も830人に急増したと発表しました。この前日23日には市発の航空便や鉄道の運行が一時停止されることが明らかになりました。
日本国内でも、神奈川県在住の中国人男性に続き、24日には日本に旅行で訪れた武漢市在住の40代男性の感染が厚生労働省より確認されています。
この新型肺炎について、「改めてどのような発生状況か?」「日常生活での注意点は?」「海外渡航は問題ないか?」など8つの疑問を産業医の武神健之さんに聞きました(情報は2020年1月23日23時時点)。
1. 新型肺炎「コロナウイルス」とは?
中国湖北省武漢市を中心に多発している新型肺炎について、産業医の私のもとにも問い合わせが増えてきています。
そこで今回は、サラリーマンが採るべき対応について書かせていただきます。ただし、この記事は1月23日23時時点の情報をもとに書いています。状況の変化などもありますので、その点、ご理解のうえ、お読みください。
まず世の中には様々なウイルスがあり、名前があります。例えば、季節のインフルエンザを起こすインフルエンザウイルス、口唇ヘルペスや帯状疱疹の原因となるヘルペスウイルス、はやり目(流行性角結膜炎)の原因となるアデノウイルス……。
私たちの周りにはウイルスはたくさんいます。コロナウイルスもウイルスのひとつのタイプです。
季節のインフルエンザのように、頻繁に流行するウイルスに対しては、ワクチンによる予防が効果的ですが、過去に流行したタイプでないウイルス=ワクチンのないウイルスの場合、予防が難しく感染が広がりやすいです。
また、ヘルペスウイルスや季節性インフルエンザウイルスに対しては、対応する抗ウイルス薬がありますが、新型コロナウイルスは抗ウイルス薬がありませんので、基本的な予防が大切になります。
2. SARS(サーズ)とは何が違うのか?
2000年以降でも、いくつかのウイルスによる感染症が世界で流行しています。
例えば、2003年頃中国を中心に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年以降に中東で流行ったMERS(中東呼吸器症候群)はいずれもコロナウイルスによるものです。2005年頃から鳥に流行った鳥インフルエンザ(Avian flu)や、2009年にパンデミックになった2009年新型インフルエンザ(豚インフルエンザ、Swine flu)は、インフルエンザウイルスによるものです。
ウイルスの種類により、どれくらい感染が広がりやすいか(感染力)、どれくらいの重症化・死亡率なのかは異なります。SARSやMERSに比べれば、現時点でわかっている新型コロナウイルスの死亡率は低いです。
ただ、大切なことは、ウイルスの名前よりも「動物から人に感染する」だけなのか、「人から人へも感染するか」です。
今回のコロナウイルスは、人から人へ感染する可能性があると認識されています。つまり、発生の中心地の武漢市に渡航しなくても、感染している人からうつる可能性があります。