あいた時間にできる介護の仕事。資格不要の「介護スキルシェア」体験で少し泣いた
単純な仕事と思いきや…?
施設に戻ると、次はカフェサービスの仕事です。岡村さんから、オーダーの取り方を教わります。コーヒー、紅茶、緑茶、お酢のドリンクなど、カフェメニューは充実。これには理由があるそうです。
「身体を動かせないと、何をするにも生活の幅が狭まってきます。決められたものを提供するのではなく、少しでも生活に豊さを感じてもらうために、いろんなメニューを用意して自分で選んでもらえるようにしています」
利用者思いのサービスに、思わずうなります。仕事の意義まで教わると、介護業界への見え方も変わってきます。
カフェのサービスは「コーヒーお持ちしました」「ありがとう」といった会話が自然と生まれます。実はこの仕事には、利用者の人と接し方に困らないようにコミュニケーションを取りやすくする意図が込められていました。
利用者の方から「あなたこないだも来てたわよね? お歌を歌ってくれたじゃない?」と勘違いされてちょっと戸惑ったり、「かき氷のいちご味、懐かしいわぁ。昔はいちご味しかなかったのよ」という言葉から恵まれたいまの生活を思ったり、普段あまり接する機会がないご年配の方の視点は新鮮でした。
ひ孫もいるというおばあちゃん。体調の都合で話し方がたどたどしくなってしまうようですが、なんとか言葉を聞き取ります。職場で出会ったという旦那さんには、先立たれてしまったそう。しんみりしてしまいました。そこで質問してみました。
「結婚で大事なことはなんでしょうか?」
「……だきょう」
これには笑ってしまいました。そして、旦那さんとの思い出の歌であるという昭和歌謡「湯の町エレジー(近江俊郎)」をスマートフォンで流して一緒に鑑賞。するとおばあちゃんが涙ぐんでいるのがわかり、私も少しもらい泣きしてしまいました。
ほかにしたことといえば、皿洗いや移動の手助け、ストレッチ運動の掛け声などで、自分ができることは小さなことだったかもしれません。それでも受け入れてくれる環境のおかげで役割以上の経験を得ることができました。3時間のお手伝いを終え、最後は謝礼金3500円を受けとりました。
はじめの印象は「怪しい」
スケッターを積極的に活用している施設長の岡村さんですが、はじめの印象は「怪しい」だったそうです。
「氏名や病状など個人情報も多い環境で、どんな人がわからない人を働かせて大丈夫なのかという疑問がありました。その点をスケッターの社長に直接伺った上で、試しに利用してみました。介護業界に興味がある人が参加しているので、徐々に不安は解消されました」
さらに、スケッターを利用して3カ月で、週1のパートなども含む6名の採用が決まったといいます。しかも人材会社で発生するような紹介手数料はかかりません。
「採用につながっていることが一番助かっています。求人広告も出していますが、それなりの金額を払っているのに応募の連絡は月に1度あるかないか。スケッターは、月額2万円で月30人ほどの人と接点があるので、出会える件数は圧倒的に多いです。
また、高校生や大学生も参加して『将来こういう施設があったら働いてみたい』というコメントを残してくれています。介護業界の高齢化で働き手がいなくなってしまう社会の課題もあるので、“介護のウーバーイーツ”のような気軽なかたちでも、多くの人が接点を持ってもらえたらと思います」