東京メトロ03系が熊本電鉄に“転職”。波瀾万丈な車両の現況
元銀座線と元日比谷線の車両が熊本へ
熊本電鉄は大ベテランの車両が多く、更新が課題となっていた。しかしながら、資金的に1両1億円台の新車を車両メーカーに発注することが困難なため、状態のよい中古車を探すほかない。
老朽化が進み、唯一の非冷房車だった5000形青ガエルの単行車2両を置き換えるため、東京メトロ01系2編成4両の導入を決めたあと、2014年頃から次なる中古車の検討に入る。当時、東京メトロと東武鉄道は、日比谷線のホームドア設置に向けた第3世代車両導入を発表し、両社の第2世代車両を置き換えることになった。
熊本電鉄は03系の導入を検討し、東京メトロに打診。協議したところ、03系の廃車時期と中古車導入時期のタイミングが決め手となり、3編成6両の移籍が決まった。
まず、03系第31編成が2018年7月30日に廃車され、先頭車2両が九州へ渡り、西鉄テクノサービス(現・西鉄エンジニアリング)で改造を受ける。2019年3月15日に03形として車籍登録され、試運転を重ねたのち、4月4日に再デビューした。その後、7月26日にスカート(排障器)が取りつけられ、7月28日に営業運転を再開している。
熊本電鉄によると、今回の03形第31編成は6000形6101A-6108A 編成の代替として導入された。なお、当該編成は03形の導入を待たずして、2018年11月17日に廃車。2019年度も1編成導入され、こちらは同年度で引退した3代目200形の代替となる。
直流1500ボルトから600ボルトへ
01形は集電方式や線路の幅が異なるため、西鉄テクノサービスで大掛かりな改造を受けた。今度の03形も意外と改造箇所が多岐にわたる。
まず、日比谷線の架線電圧は直流1500ボルトに対し、熊本電鉄は600ボルト。すぐに使うことができず、降圧化改造を受けなければならない。
こうして、異なる架線電圧は機器面にも影響を与える展開となった。
03系の先頭車はモーターを搭載していないため、8号車(03-100形)を電装。03系の冷房機は、一部の編成を除き車外スピーカーも内蔵されていたが、架線電圧が異なること、屋根上にシングルアーム式パンタグラフ2基などを搭載したため、更新された。
また、屋根上の設置スペースの関係で、1・8号車とも冷房機のサイズがやや小さくなり、車内にも冷房機を設置。冷房機の更新に伴い、車外スピーカーは乗務員室ドア上に設置された。
制御装置は東京メトロ時代と同じVVVFインバータ制御(現代の省エネ車両)ながら、機器は01形と同じものに更新。最高速度も110km/hから50km/hに引き下げとなった。
車体のカラーリングは03系時代のままで、先頭車の貫通扉と側面に「ワンマン」のステッカーを貼付。車体側面のロゴマークは01形と同様、“東京メトロの熊本電鉄版”で、遊び心があふれている。“乗りに来てほしい”という熊本電鉄の思いが伝わってくる。
デジタル方向幕は3色LEDのままながら、側面の日本語表示は明朝体からゴシック体に変更された。