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二極化する副業の現実。本業年収200万未満と、1000万以上の事情

コラム

お小遣い稼ぎからパラレルワークに関心シフト

「副業」とともに検索に使われたキーワードからは「確定申告」「税金」「年末調整」「給与所得」など、実際副収入を得た人に必要な情報が求められている様子がわかります。

 おおむね世帯年収400万~600万円程度の30代が検索していて、思い浮かぶのは確定申告に慣れない会社員像。比較的年収低めのゾーンでは「バイト」「在宅」「ネット」「データ入力」など、仕事を探すための検索が多そうです。

副業

図表7:「副業」検索ユーザーの併用検索キーワード(PC、無職を除く。2018年6月-2019年5月)

 副業ライフのための学びを提供する「副業アカデミー」を検索するのは、年齢も世帯年収も高い層です。副業を始めるための学びに先行投資できるほど、余裕があるということでしょうか。「土日」「解禁」「公務員」なども比較的高年収のユーザーに使われていました。

「ばれない」「ばれる」「バレない」などの検索ワードからは、まだまだ会社に内緒の闇副業も連想しますが、1年前に比べるとユーザーは減っています。また、1年前は「株」「FX」など、副業といってもお小遣い稼ぎにまつわるキーワードが多かったのですが、リアルなパラレルワークへと関心がシフトしているようです。

ユーザーが一番使っているサイトは「freee」

 副業に関心のあるユーザーが実際に使っているサイトは、会計ソフト「freee」ユーザーの急増ぶりが顕著。1年前よりは減っているものの、同じく会計ソフト「マネーフォワード」も上位に入っていて、実際に得た副業収入の管理や申告ニーズが出てきたとみられます。

副業

図表8:「副業」キーワードで検索したユーザーの閲覧上位サイト(PC、無職を除く。網掛けはいずれかの期間のみランクインしたサイト)

 1年前は1位だった「フクポン」、3位の「お金がないときに.com」はランキングから外れ、お小遣い稼ぎ色の強い「熱血!副業部」はランクダウン。2位「ノマドジャーナル」、3位「副業ネット」、5位「副業クエスト」、7位「助っ人」などのパラレルワーカー向けメディアがユーザーを増やしています。

 フリーランサーが多くシステム開発やデザインワーク中心の「クラウドワークス」は1年前7位でしたが、直近1年は代わってより幅広いバイト探しサイト「タウンワーク」が8位に入りました。

副業の価値は、お金だけで計れない

 副収入(できればラクして)重視の限られた人びとから、ごく一般的な会社員へと、副業に関心を持ち実際にこなすパラレルワーカーは裾野を拡大しているようです。

 しかし一方、本業をこなしつつ、会社から離れたひとりの個人として仕事をゲットし、成果を出し、対価を得る働き方がそう容易ではなく、誰にでも向いているわけではないという現実も、ときに目撃します。クラウドソーシングや仕事マッチングサイトは便利ですが、価格競争の激しいレッドオーシャンかもしれません。

 やっとつかんだお客様は、もしかしたら手離れが悪くて、ご都合で納品や入金が遅れるかもしれません。そうしたリスクを吸収して毎月きっちりお給料を払ってくれる会社という器は、ずいぶん大きなリソースを会社員に提供しているのです。副業の価値は、お金だけで計れません。こうして書き散らかしていれば新しい仕事が迎えにきてくれたり、仕事にならなくてもたくさんの出会いがあります。そしてもちろんスキルアップも期待できます。

 それでも、いま現在のあなたにとっては、本業での実現が向いているかもしれません。人生100年としたら、転職も学び直しもパラレルワークも、チャンスはたくさん。いまはあえて副業に背を向けるという選択も、素晴らしいと思います。

 これから副業を始めるひともすでに実践しているひとも、本業に集中したいひとも、自分の価値と仕事に求める価値、そして価値を得るためのコストを絶対に軽視せず、自分にとって豊かな働き方を楽しんでいただきたいものです。

<TEXT/清水響子>

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している

【調査・分析データについて】
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズが提供する、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用しました。データはヴァリューズ保有のAndroidスマートフォンモニター(20代以上)での出現率を基に、国内ネット人口に換算して推測しています。

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