内勤でもスーツは強制?新卒デザイナーが“紙の”反省文を書かされた事情
反省文を書きながら泣いた。涙で文字がにじむ
「給料が翌月払だったので当初お金もなく、スーツを買い足せなくて」と弁解しても、聞き入れてもらえなかった、小野さんは結果、反省文を書かされることに。
デザイナー職であっても「スーツ出社が当然」という社風を理解していなかったため、早くもつまずいてしまいます。
「反省文を提出しろと言われた時も、言い返したくて仕方なかったです。そもそも社外に出て客先に会う時のマナーとしてスーツを着るのはわかりますが、一切、社外に出ないし、来客もない僕がスーツを着用する必然性って何かありますか? 言い争って勝つ自信もありましたが、上司は典型的な“頭固いおじさん”といった雰囲気で、真っ向から口答えしたら、もう1枚反省文が増えそうだったので、諦めました」
小野さんの怒りはいまでも収まらず、「この人手不足のご時世に、反省文を書かせて、若手の手を煩わせる必要があるのでしょうか」と語ります。
「実は就活時、他にもベンチャー企業やゲーム会社から内定をもらっていたのですが、そっちに就職していたら、こんなことにはなっていなかったし、好きな服を着て、純粋にデザインを楽しめたのではないかと思います。この会社のデザインの仕事は、どれもつまらない案件で、説明会にあったような面白い案件って、実は奇跡的に一度だけ受注した作品でした。これは詐欺だと思っていますし、文字が涙で紙がにじみました」
「社歴の長さ」「安定性」は本当にメリットか?
社歴が長く会社にキャリアがあることは魅力的ですが、シャープやJALの例を見るまでもなく、社歴が長い企業だから安定しているというわけではありません。
「親世代にとっては、よく知らないゲーム業界や安定性のないベンチャー企業よりは、社歴の長い会社のほうが安心できたのかもしれません。とはいえ、実際に働くのは僕ですし、その安心感は僕とってメリットにはなっていません」
小野さんが大事にしているのは「多様性」や「個人の尊重」「新しく革新的なデザイン案件」を手がけられることです。新しいことに挑戦していくベンチャー企業のほうが、彼が求める環境を用意してもらいやすい気がします。
社外に出ないのにスーツ出社が義務であること、反省文が紙だったこと、ルールがいつまでも更新されないことなど、不満だらけの小野さんは早くも転職を考えているそうです。世間体や体裁もありますが、一番大事なのはそこで働く自分の気持ちです。社内環境が見えづらい、内勤だからこそ起きてしまったミスマッチでしたね。
― 新入社員の身だしなみ、大丈夫? ―
<取材・文/ミクニシオリ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>