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札幌アパマン爆発事件「消毒代」請求の闇

コラム

なぜ大量のスプレーをガス抜きする必要があったのか?

ヘヤシュ

「ヘヤシュ 消臭・除菌スプレー」※ヘヤシュ公式サイトより http://heyash.jp/products/

 さて、今回テレビ報道などで判明したのは、「ヘヤシュ」という除菌消臭スプレーの新品120本を仲介店の中でガス抜きしたあと、湯沸かし器をつけた際に爆発したということでした。では、なぜヘヤシュの新品を大量に仲介店の中でガス抜きする必要があったのでしょうか? 店舗がそんなに臭かったわけではないでしょう。

 アパマンショップの消臭がヘヤシュを撒くことと一緒なら、消毒代の請求件数とヘヤシュの空き缶の数は一緒のはず。本部のエビデンスチェックで空き缶確認が必要となります。報道でも「本部が空になったスプレー缶を回収していた」という証言も出ていました。

 つまり、業務が忙しく実際は消臭を実施しなかった部屋が大量にあり、「空にする必要があった新品在庫が120本あった」ということではないでしょうか。それ以外に説明がつきません。

 事実、事故のあった店舗を運営するアパマンショップリーシング北海道の佐藤大生社長も会見で、一部未施工があったことを認めています。実際に消臭を行っていないのなら、これは契約不履行ということになります。

いい加減なのは「アパマン」だけではない

 では、アパマンだけがいい加減なのかと言われれば、そうとも言い切れません。「不動産業界あるある」と言ってはなんですが、氷山の一角でこのようなことは大なり小なり、どこでもあり得ることです。

 不動産仲介店の収益モデルは、法律によって仲介手数料の上限が縛られています。売買の場合は物件価格の3%+6万円、賃貸の場合は賃料の1ヶ月と決まっています。

 札幌市豊平区の1LDKの賃料相場は4万~5万円、2LDKは6万~8万円という世界。一人あたりノルマの月80万~120万円の売上を上げるのは相当大変な世界です。そもそも仲介店は案内しても、契約が決まらない限り見学料などのお金をとってはいけませんから、賃料が低い場所では1契約あたりの収益をなんとしてもかさ増しする必要があります。

 アパマンは消臭施工を下請けに出すのではなく仲介店員が除菌消臭スプレーを置く、という仕組みにしていたようですが、札幌の広い土地で、設置と回収の手間を考えると、繁忙期の契約に追われる仲介店員が未実施のまま放置してしまう理由はわかります。であるならば、契約が履行できないとして繁忙期は消毒代を請求すべきではありません。

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