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就活の常識が変わる!?ワンキャリアとアドビが提案する“ビジュアル自己PR”とは?

企業インタビュー
就活の常識が変わる!?ワンキャリアとアドビが提案する“ビジュアル自己PR”とは?

就活の自己PRは、もはや“文字だけ”では伝わらない時代に突入? 就活支援プラットフォーム「ONE CAREER」を運営する株式会社ワンキャリアとクリエイティブツールの世界的企業であるアドビ株式会社が提案するのは、視覚的に自分をアピールする新しい自己PRシートです。これまでの就活の常識を打ち破る表現方法が、就活生の可能性をどう広げるのでしょうか。そのヒントを探ります。

ワンキャリアとアドビが新しい就活像を提示

就職活動(就活)で企業の選考を受ける際に提出するのがエントリーシート(ES)です。

ESを書くうえでは、学生が自身のサークルやアルバイト、インターンシップといった課外活動での経験やそこで得た成果を具体的なエピソードとして盛り込み、自分の強みをアピールすることが大事になります。

しかし、何を書けば評価されるのか、どのような言葉を選べば自分の魅力が最大限に伝わるのかといった不安が募りがちで、多くの学生が頭を悩ませています。

株式会社ワンキャリア(以下、ワンキャリア) が提供する就活サイト「ONE CAREER」の調査によると、就活生の半数以上が「ESの作成に不安を感じている」 と答えているそうです(※)。

ChatGPTで就活のESを約30秒で作成。ワンキャリア、書き方よりも内容に時間を割けるES自動生成サービス「ESの達人」 β版が5月中旬にリリース。~ChatGPT×15万件のESデータで、就活生がESの書き方に悩む時間を大幅削減~ | ONE CAREER Inc.|株式会社ワンキャリア

就活において、企業との最初の接点となるES。

学生にとっても、避けては通れない“関門”だからこそ、この段階でつまずいてしまうと、せっかくの選考のチャンスを逃してしまう可能性も。

また、ESを受け取る企業側も、テンプレート通りで形式的な内容だと、「学生の個性がわかりにくい」「スキルが見えづらい」といった課題を感じているそうです。

こうした背景から、従来のような文章だけのESだけではなく、学生の個性や強みを自由に表現できる、もっと想いが伝わる新しい自己PRのあり方が求められています。

そんななか、ワンキャリアとアドビ株式会社(以下、アドビ)は、2025年2月からONE CAREERとアドビが提供するオールインワンのコンテンツ制作アプリ「Adobe Express」の連携機能をリリース。

今までのテキスト中心で画一的なESにとらわれず、就活生は自分らしさをクリエイティブに表現できる自己PRシートを作成することが可能になりました 。

ONE CAREERに会員登録をしていると、Adobe Expressで作った自己PRシートをONE CAREER上に保存できるほか、それを見た企業からスカウトが届きます。

なお、自己PRシートに画像登録をしていると、していない人に比べてスカウトが2.8倍届くというデータ(対象期間2025年01月~2025年03月 26卒・27卒)があるそうです。

ワンキャリアとアドビによる#ES自由化宣言イメージビジュアル

さらに、2025年5月からは「私らしさが、武器になる。」 をキーメッセージに掲げた『#ES自由化宣言』のキャンペーンを実施し、企業・学生・社会に対して新しい就活像を提示しています。

その一環として、2025年6月12日には「自己PRスキルアップセミナー 自己分析~突破力のある自己PRへ~」をテーマにした就活生向けセミナーがアドビの日本オフィスで行われました。

就活の正解に固執せず、勇気をもって一歩踏み出すこと

ストレングス・ファインダーによる自己分析や、Adobe Expressを使った”自分らしさ”を視覚的に伝える「新しい自己PRシート」 の作り方など、就活生たちにとって有意義な時間となりました。

「ストレングス・ファインダー講習」の様子

午前中は、アドビ Talent Development Partnerの小川名珠梨さんが登壇し、「ストレングス・ファインダー講習」を90分間行いました。

ストレングス・ファインダーとはギャラップ社が提供する才能診断ツール。177問のオンラインテストに回答することで、34の資質の中から上位5~10の資質を特定し、個人の強みや才能を見つけるのが特徴です。

単なる自己分析に留まらず、自分の思考や行動のパターンがどのような「強み」に紐づいているかを客観的に捉えることで、もっと伝わる自己PRを探求する時間となりました。

就活系YouTuber・しゅんダイアリーさん登壇の様子

その後、就活系YouTuberのしゅんダイアリーさんがゲストとして登場。当初は学歴や経験のなさにコンプレックスを抱いたそうですが、Facebookを使って直接社長に会うなど、積極的な行動によって独自の道を切り拓いてきました。

そんなしゅんダイアリーさんは、他の学生と比べて自信を失いがちな就活生に対し、「まず行動することの重要性」を説きました。

「“自分らしさ”は固定されたものではなく、多くの人と出会う経験を通して作られるもの。テンプレに頼らず、つたなくても自分の言葉で考え、語ることが大切」だと強調しました。

就活の正解に固執せず、勇気をもって一歩踏み出すことが、自分だけのキャリアを築く鍵になるとしゅんダイアリーさんは語っていました。

Adobe Expressで自分の個性が伝わる自己PRシートを作る

「ストレングス・ファインダー読み解きワークショップ」の様子

お昼休憩を挟み、午後からは「ストレングス・ファインダー読み解きワークショップ」を行いました。診断結果から、自分の強みや資質を導き出していきます。

午前中に行ったストレングス・ファインダーの結果をもとに、就活生は自身のトップ5の資質を具体的なエピソードを交えてペアで共有しました。

「資質は生まれつきの思考や行動パターンであり、使い方次第で良くも悪くもなる。また、トレーニングやスキル開発といった『投資』をすることで自分の強みへと育てることができる」

そう語ったアドビの小川名さんは「資質は個人の性格を決めつけるものではなく、可能性に焦点を当てるもので、自分の資質を理解し、それを強みとして活用することで、自信を持って就職活動やキャリアを築ける」と就活生の背中を押しました。

次いで、ワンキャリアの岩野さんによるストレングス・ファインダーの診断結果から強みを見える化するワークショップのあと、プロのクリエイター/イラストレーターとして活躍する北沢直樹さんが「Adobe Expressを活用した自己PRシート作成ワークショップ」を実施しました。

Adobe Expressを活用した自己PRシート作成ワークショップ」の様子

まず、就活生は自身の経験や個性を反映した自己PRシートを作成するため、グラフィックデザインの重要な要素であるレイアウト、色、文字の扱いについて学びました。

次いで、北沢さんはAdobe Expressの基本的な使い方や、アドビの生成AI、Adobe Fireflyを使って写真の服装を変更する実践的なテクニックも紹介しました。

ワークショップの後半では、就活生がONE CAREERのウェブサイトから直接Adobe Expressにアクセスし、就活用にカスタマイズされたテンプレートを使いながら、自身の写真やキャッチコピーを編集し、自分の個性を効果的に伝える自己PRシートづくりに励みました。

自己PRシートの例
自己PRシート作成の様子

今回のセミナーに参加した学生からは、「さまざまな自己分析のやり方があるが、ストレングス・ファインダーは初めてで、自分の意外な強みを見つけることができて良かった」(男性)、「ちょうど今日までにESを提出しなければならなかったが、Adobe Expressを活用することで、自分のアピールポイントをビジュアルで表現することができた」(女性)といった感想を聞くことができました。

今の時代は自分らしさを出していくことが「魅力」につながる

クリエイター/イラストレーターの北沢直樹さん

セミナー終了後に、クリエイターの北沢さんにワークショップ講師として登壇した感想や、Adobe Expressで自己PRシートを作成するメリットについて話を聞きました。

── 今回のワークショップでは、学生とコミュニケーションをとりながら、Adobe Expressの使い方を教えていました。実際にやってみての感想はいかがでしたか?

北沢:今の学生はデジタルネイティブ世代で、普段からいろんなツールを触っているからこそ、一度使い方を教えれば感覚的にわかるんですよね。

Adobe Expressは初心者でも使いやすいアプリなので、操作性とかデザインに関しては全然悩まずにできていたと思います。

私はいろいろなところでAdobe Expressのワークショップをやるんですけど、学生の場合は本当に短時間でいいものができた印象はあります。初めてAdobe Expressを触る人も、直感的に使ってくれていましたね。

── “自分らしさ”に気づくのは結構大変なことだと思いますが、今回はテンプレートがたくさんあったので、学生の方も自分の個性を反映した自己PRシートを作成しやすかったのではと感じています。

クリエイター/イラストレーター・北沢直樹さんインタビューの様子

北沢:Adobe Expressを使えば、自分の強みや個性を視覚的かつ効果的に採用担当者に伝え、多くの応募者の中で埋もれない自己PRシートを作成できるのが魅力です。

さらに、ONE CAREER上からAdobe Expressにアクセスすることで、自己PRシート作成に最適化されたテンプレートを選べるのは、学生にとっても非常にやりやすかったのではないでしょうか。自分がかっこいいと感じるものとか、可愛いと感じるものを選ぶのも、自分のセンスだと思うんですよ。なので、テンプレートを選ぶところからも、実はデザインの力を自然と使っているような気がします。

── ONE CAREER with Adobe Expressによる「#ES自由化宣言」のキャンペーンですが、クリエイターとしてどのように感じましたか?

ONE CAREER with Adobe Expressによる「#ES自由化宣言」のキャンペーン

北沢:クリエイターは、ポートフォリオをかっこよく見せることをすごく大事にしてるんですけど、今回のAdobe Expressを使った「自己PRシート」の作成も、それにすごく近いなと感じました。

人の目に留まるとか、人よりインパクトを与えるとかって、すごく大事だと思っていて。そういう面では、アドビが掲げる「Creativity for All:すべての人に『つくる力』を」の精神とマッチしている企画でしたね。

── 「私らしさが、武器になる。」というキーメッセージはどう受け取られましたか?

北沢:僕の身なりを見ていただくとわかると思うんですが、金髪だったり、自分らしいスタイルでいることが、昔からクリエイターの気質だと思っています。今は、それがクリエイターに限らず、誰にとっても大事な時代になってきていると感じています。

普段は内にこもっている人であっても、就職活動の時は頑張って自己アピールするわけじゃないですか。ただ、テクノロジーを味方にすることで効率化できる部分もありますし、例えば、「生成AIでスーツを着せてみたら意外と似合っていたから、今度ファッションに取り入れてみよう」といった気づきにもつながるんです。

学生の皆さん一人ひとり、少なからず自分の好きなことがあると思うので、そういうのを押し出したりするのが、その人の魅力につながると考えています。

── Adobe Fireflyを使った「服の着せ替え」は本当に驚きました。

北沢:スーツを着ると、どうしても姿勢や表情が硬くなりがちですが、採用面接で求められるのは、ありのままの自分らしさです。友達と笑い合っている時のような自然な表情こそ、本当の魅力が伝わるわけですね。

なので、例えばスーツ姿で撮った写真より、普段友達と遊んでいる際の笑顔で撮った写真のほうが、明るく親しみやすい印象を与えることができます。面接官もESの雰囲気と同じだと感じやすくなり、人柄をイメージしやすくなると思うんです。

そういう意味では、自然と笑顔が溢れている写真を選んで、Adobe Expressの生成AI機能で表現の可能性が広がる例として、紹介させていただきました。

── 北沢さんはクリエイターとして、今後どのような活動をしていく予定ですか?

北沢:私は今、東急プラザ原宿「ハラカド」で開催している「Re:DESIGN SCHOOL」というスクールでグラフィックデザインを教えていて、大学生から社会人まで幅広い層の生徒さんが受講しています。

キャリアアップしたい、デザインにもう一度チャレンジしたいといったように、さまざまなニーズから参加いただいていますが、私自身はそういった方に少しでも寄り添えたらいいなと思っていますね。

生徒から「私の魅力なんだと思いますか?」と聞かれたら一生懸命探しますし、デザインもいいところを見つけてアドバイスしたりと、その人の背中を押せるように意識しています。

「#ES自由化宣言」が目指すもの。アドビ担当者が語るCreativity for Allの本質

アドビの加納さんと安達さん
アドビの加納宏徳さん(左)と足達穂波さん

ONE CAREER with Adobe Expressのキャンペーン実施に至った背景や、今後の展開について、本プロジェクトに関わったアドビの担当者は次のように語りました。

「ワンキャリアさんが掲げる『人の数だけ、キャリアをつくる。』とアドビの掲げる『Creativity for All』という理念が合致し、今回のコラボレーションが実現しました。特にAdobe Express は無料で手軽に始められ、学生が個性を表現するのに最適なツールでしたので、ちょうど新卒採用の本格スタートに合わせて就活生がAdobe Express を実体験できる場を提供することになりました。

その一方で、『こんなものを作りたい』というアイデアがあっても、実際にそれを形にするのは難しいと感じる人は多いと思います。そのため、今後は動画で分かりやすい説明を提供したり、充実した解説コンテンツを用意したりと、ユーザーが迷うことなく、スムーズにアイデアを形にできるようなサポートも強化していきたいですね」(加納さん)

「私自身、大学生の頃から就活の中で、自己PRの表現が文字だけということに不自由さを感じていました。 そんな原体験があったなか、Adobe Expressというデザインツールを広めていこうと考えた際に、日本の『就職活動』は、多くの人が同時期に一斉に動くタイミングだと気づいたのです。そこから、提携先を考える中で、ワンキャリアさんが掲げる『人の数だけ、キャリアをつくる。』というミッションが、アドビの理念である『Creativity for All』と非常に近いと感じたところから、今回の協働がスタートしました。

旧来のESだけではない自己の表現方法があれば 、企業にとっても学生にとっても、もっと本質的にお互いを評価できる仕組みが作れると思っています。この取り組みは、まず新卒の就職活動から始めていますが、その先には第二新卒や中途採用といった転職市場への展開も視野に入れています」(安達さん)

従来の画一的なESだけではなく、学生の個性を引き出す新たな自己表現の形を探求した「#ES自由化宣言」の取り組み。企業と学生のより良いマッチングを実現するため、新しい就活のスタンダードとして広がっていくことが期待されます。

Adobe Express

<取材・文・撮影(インタビュー)/古田島大介>

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