中国が日本人向けのビザ免除を再開!その背景にある2つの課題とは?
インターネットやSNSで世界中の情報がリアルタイムで手に入る時代、オンライン会議で日本はもちろん、海外のどこにいてもコミュニケーションできるのが当たり前となった。ビジネスパーソンなら海外のビジネス関係のニュースも押さえておきたい。
そこで、各国の情勢に精通しているピエール・パパンさんに、中国が日本向けのビザ免除を再開した背景について解説してもらった(以下、ピエール・パパンさんの寄稿)。
中国が日本人向けのビザ免除措置を再開
中国が11月30日、日本人に対する短期滞在ビザの免除措置を4年半ぶりに再開した。中国は新型コロナや冷え込む日中関係などを理由に、日本人向けのビザ免除措置を停止してきたが、再開によって日本人の中国渡航がスムーズになる。
中国に進出する日本企業の間では、中国への出張がしやすくなり、中国各地を結ぶ直行便がさらに増えるとの期待の声も聞かれる。以前、中国人観光客が東京で爆買いすることが話題になったが、これによって中国人観光客の数も復活するとみられ、日本の観光地での期待感も高まっているようだ。
では、なぜ今になって中国は日本人に対する短期滞在ビザの免除を再開したのか。
トランプ政権の再来への警戒
1つ目の理由は、トランプ政権だろう。11月の米国大統領選挙ではトランプ氏が圧勝し、国務長官や安全保障担当の大統領補佐官たちには相次いで対中強硬派が起用され、トランプ氏はすでに中国に対して戦闘モードに入っている。トランプ氏はタリフマン(関税男)と自認し、中国に対して関税引き上げという攻撃を連発する見込みだ。
中国は米国が保護主義に走り、自由で公正な国際貿易が阻害されていると諸外国に訴えることで、日本など諸外国との経済関係を安定化させたいという狙いがある。トランプ政権の再来を中国は強く警戒している。
国内経済低迷と外資の中国離反
もう1つは、低迷する中国経済だ。不動産バブルの崩壊や若者の高い失業率、経済格差、鈍化する経済成長率など、今日の習政権は経済的難題に直面している。最近、中国では無差別な殺傷事件が相次いで発生していると報じられており、大きな社会問題となっているが、その背景には仕事がない、給与が低いなどの経済的不満や社会への恨みがあると考えられる。
また、改正反スパイ法や米中対立など中国を取り巻く地政学リスクも影響し、外資の中国離反が拡大しており、習政権としては何とかして外資を取り込む必要がある。
以上のような理由により、中国は日本人に対する短期滞在ビザの免除措置を再開したと考えられる。しかし、20249月には深圳の日本人学校付近で日本人の児童が殺害される事件が発生しており、今回の再開によって日本人の中国往来が活発化するかは未知数と言えよう。