岡山県知事が教える!「結婚に失敗しない人」と「移住で成功する人」の意外な共通点
「瀬戸内で移住したい県No.1」(2024年版「移住したい都道府県ランキング」)にも選ばれている岡山県は、暮らしやすい環境や充実した移住・定住支援制度などにより、移住先として注目を集めています。2024年11月23日(土)には、東京・恵比寿で女性の先輩移住者と交流して岡山県の暮らしを知るイベント「おかやま晴れ暮らしのすすめ」が開催され、約70名の来場者が訪れました。このイベントで挨拶をした岡山県の伊原木隆太知事にbizSPA!編集部が独占インタビュー。岡山県の魅力だけでなく、移住成功者と「結婚に失敗しない人」との意外な共通点まで教えていただきました!
災害が少なく生活費が安い岡山
――岡山県は、「瀬戸内で移住したい県No.1」に選ばれるなど移住先として人気だと伺いましたが、この10年間でどのような変化があったのでしょうか?
伊原木知事:まず2011年の東日本大震災を機に、東日本や関東地方から多くの方が岡山へ移住し始めました。そうした方々が求めていたのは、何よりも安心できる生活環境です。
統計上明らかになっているのが、2012年頃から二次避難先として岡山に来られた方が多かったということです。初めは大阪や福岡に行った後、物価や生活の騒がしさから、岡山を選ばれたのです。
岡山は地震が少なく、晴天の日が多くて水害の心配もあまりありません。田舎でありながら、東京や大阪へのアクセスも良好です。それに食費や家賃など生活費が安いことも魅力のひとつです。例えば、物価指数でも岡山は全国で安いほうから10番目に位置しています。
この10年で特に変わったのは、移住相談に来る人々の層です。以前は引退後の生活を考えている方が多かったのですが、今では40代以下で子育て中の方が7割を占めています。
――移住者の7割が40代以下ということですが、やはり首都圏の方が多いのですか?
伊原木知事:セミナーを東京や大阪で開催すると、その地域の方が多く参加されます。今年のデータでは、大阪で111組、東京では178組の参加がありました。この数字は昨年と比べると倍近くに伸びており、うれしい限りです。
岡山に住む私たちからすると急に変わったわけではありませんが、ここ数年で岡山の魅力が再評価されているようです。
いきなり引っ越すのではなく自分に合うかどうかを試してみる
――それは素晴らしいことですね。岡山に移住しようと考えた場合、どのような心構えが必要でしょうか?
伊原木知事:私自身、東京やパリ、アメリカではニューヨークのほか、ウェストバージニアの田舎からユタ州の砂漠のど真ん中、シリコンバレー、ホノルルまで、岡山以外の場所に住んでいた経験があります。それぞれの場所にはその土地ならではの楽しさがありますし、どんなところでも人生を楽しむことができると思います。岡山が合うと思われた方は、ぜひ実際に訪れて感じてみてほしいです。大事なのは、決め打ちせず、じっくりと試してみることです。
――「どこでも楽しむ」という感覚が大事ですね。では、岡山に興味を持って移住を考える人にアドバイスをいただけますか?
伊原木知事:まず、岡山が自分に合うかどうかを試してみるのが一番です。私は「いきなり家を買ったり、東京の家を急いで売ったりしないほうがいい」といつも言っています。最初は旅行から始めて、次に1カ月単位でアパートを借りてみる。いきなり飛び込むのではなく、それから少し長めに滞在してみて、「これはいける」と思ったら家を買ったり、東京の住まいを売ったりと次のステップに進む。半年くらいはじっくり様子を見て、いつでも元の生活に戻れるようにしておくとリスクが少ないと思います。
東京と変わらないような環境からディープな田舎まで
――岡山の中でも、どのような場所を選ぶか迷う人もいると思います。その点はどう考えたらいいでしょうか?
伊原木知事:岡山は場所によって雰囲気が全然違います。岡山駅の近くだと、東京の郊外と変わらないような都市的な生活ができます。一方で、もっと田舎らしい暮らしをしたい人には北に行けば山があり、南に行けば海もある。自分の好きな「田舎レベル」を選べるのが岡山の魅力ですね。
――確かに、多様性があるのはいいですね。では、人間関係についてはいかがでしょうか? 環境だけでなく、地域のコミュニティが合うかどうかも大事ですよね。
伊原木知事:その通りです。岡山でも淡泊な人付き合いの地域もあれば、ディープなコミュニティもあります。どちらが自分に合うのか、実際に体験してみることが重要です。人との距離感が近すぎると負担に感じる人もいるでしょうし、逆に淡白すぎると「つまらない」と感じる人もいるかもしれません。
先輩移住者から話を聞くのもおすすめです。例えば、西粟倉村では人口の2割ほどが移住者なんですが、先輩移住者が新しく来た人にコツを教えてくれるので、失敗が少ないんです。段階を踏んで、それぞれに合った場所を探してみてください。
タイプの違う人と何回か付き合っておく
――知事は「投資」が重要だとおっしゃっていますが、若い人にとって、自分自身に対してどのような投資をしていくべきだとお考えですか?
伊原木知事:若いうちにいろいろ試すべきだと思います。住む場所を変えることもひとつですが、私自身、10代後半からさまざまな場所に行き、さまざまなことを経験してきました。例えば、得意な社会科を活かす道を選ばずに工学部に進んだり、その後は外資系の企業に就職してビジネススクールに通ったり、フランス料理学校に行ったりしました。そして、経営の経験を経て、今は政治の世界にいます。
――なぜ、それほどまでに多岐にわたる経験を積んでこられたのですか?
伊原木知事:怖いのは、人生の後半になって「もっと自分に合った場所が他にあった」と気づいてしまうことです。そうなると、「20年前に戻りたい」と思ってしまうかもしれません。でも、いろいろな場所を見て、自分に向いていることや向いていないことを経験から学んでおけば、たとえ人生で大きな選択をしても、後悔が少ないのではないでしょうか。だからこそ、若いうちに多くの選択肢を試すことが大切なんです。
結婚でも、誰とも付き合った経験がないまま結婚して、何年か後に別の運命の人と出会ったら大変ですよね。独身のうちにタイプの違う人と何回か付き合ってみることで、「自分はこういう人に憧れるけど、実際には合わない」ということがわかります。そうしておけば、結婚後に別のタイプの人と出会っても、「こういう人とは合わないから大丈夫」と心穏やかにスルーできます。若くて、まだやり直しがきくうちに、いろいろな人と出会い、自分に合う・合わないを知ることが、後悔の少ない選択につながると思います。
――いろいろなタイプの人と付き合って、自分に合うか合わないかを知る経験をしておくと、結婚に失敗する可能性も低いと。移住についても同じことがいえますね?
伊原木知事:そうです。若くていくらでもやり直しがきくときに、いろいろな場所を見に行っておくといいと思います。最初から「ここに住む」と決め打ちせず、まずは気軽に見に来て、自分に合うと思ったら少し深掘りしてみる。そして、また別の場所も見てみる。その中で「ここがいい」と思えたら、それが自分にとって最適な選択になるのではないでしょうか。岡山は、その選択肢のひとつとなる魅力的な場所だと思います。
――何事も最初から決め打ちせず、いろいろ試した上で選択することが大切ということですね。ありがとうございました。