ロシア生まれ小原ブラスが明かす“ウクライナ侵攻”への責任感「あ然とした」
このコラムは、読者からのさまざまなお悩みにあえて甘口で答えることで、もう1つの視点を見つけていこうというコンセプトで連載を続けている。
今回もお悩みに答えることはできるのだが、現在、ウクライナで目も当てられないほどのおぞましいことが起きている状況で、他国に侵攻をした側の国の国籍を有する者として、果たして他人の相談に答えている場合だろうか? 僕だけではなく読者も違和感を覚えるのではないだろうか?
そんなことを考えてしまう。なので、今回は趣旨を変えて、ウクライナの軍事侵攻を受けて僕(小原ブラス)がどうするべきなのか、人生相談をさせてほしい。
ロシア生まれの「ほとんど日本人」
僕はロシアの極東にあるハバロフスクという都市で生まれ、5歳の時にロシアの両親が離婚、母親に連れられ兵庫県姫路市に移住した。その時に新しい父親となった日本人の苗字をもらい小原ブラスになった。日本の幼稚園に通い、その後の義務教育も全て日本の公立の学校で受けた。友人も同級生も皆、日本人。
好物はカワハギの肝、そして熱燗だ。中身に関して言えば「ほとんど日本人」なのではないかということで、自分で経営している会社を“Almost Japanese”と名付けた。
ほとんど日本人とは言っても、生まれがロシアなので、多くの日本人と比べるとロシアとの繋がりは深い。夏休みになると毎年ロシアに住む、お爺さんとお婆さんに会いに行くのが恒例行事。日本に帰化して国籍をロシアから日本に変えることも何度も検討したが、ロシアに行くたびにビザを取得する煩わしさのために断念した。昨年末、ロシアに住む祖父母がコロナで亡くなったことをきっかけに今は帰化申請を進めている。
僕の目から見たロシアは「腐敗した国」
祖父母が生きていた頃、ダーチャと呼ばれる別荘で一夏中、ロシアの自然を浴びて過ごしたものだ。その間にできたロシアの友人や親戚との繋がりは今でもある。ロシア語は読み書きは苦手だが、聞いてしゃべることは普通にできる。
僕にとってのロシアとは、故郷とは言えないと思う。「ロシアに帰る」という言い方よりも、「ロシアに行く」という言い方のほうがしっくりくる。故郷はどこかと言われれば「姫路」だ。しかしながら、ロシアは思い出のたくさん詰まった思い入れのある場所に変わりはない。よく旅行に行く国みたいな感覚だろうか。だからロシアにはそこそこ詳しいし、ロシアのニュースもある程度チェックしてきた。
僕の目から見たロシアは、どうしようもなく腐敗した国に見える。プーチン大統領は一生その座を降りるつもりはなさそうだし、長い歴史の中で国民も政治家を“選ぶ”という感覚を失っているように感じる。僕はゲイだが、いまだに「LGBTQはアメリカのプロパガンダだ」という訳のわからないことを言う人もいて、とにかく多様性やマイノリティという存在が自由に生きていくにはあまりにも酷な社会だ。ロシアに住めるか? と聞かれたらもちろんNO。
それでも時々、ロシアに行って、現地の人と交流すると楽しいし、何よりも祖父母の存在が大きく何か見えない紐で繋がれたように、むしろ縛られたように引き寄せられる国だ。