「好きなことを仕事にする」発想が危ないワケ。ネットで注目の起業家が語る
20代といえば、自分の将来について考える時期です。サラリーマンなら今の会社で働くのか、それとも独立して起業するのか。
昨年末に初の著書『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス)を刊行した“えらいてんちょう”(以下、えらてん)こと矢内東紀さん。2016年にリサイクルショップ創業以来、イベントバーの設立や小規模のM&Aなど数々のビジネスに携わり、現在はYouTuberや経営コンサルタントとして活躍しています。
前編ではプロフィールや新刊中心に話を聞きましたが、後編ではさらに踏み込んで、現代を生きるビジネスパーソンに必要な考え方や働き方を伺いました。
稼ぐのは肉体を動員しないと儲からない
――初の著書は『しょぼい起業で生きていく』ですが、起業をしたい人が気をつけるべきことは?
えらてん:起業する人が気をつけないといけないのは「この値段で売れたらいいな」っていう自分勝手な考え方になってしまうこと。この値段で売れたら、原価率が何割で、家賃がペイできて給料が出るなという計算はほぼムリです。
売れるかどうかはお客さんが判断する。計算してできることではないんです。売れる値段をベースにして、できることを逆算してやっていくしかないと思います。
――稼ぐために必要なことを教えてください。
えらてん:頭か筋肉というか、肉体を動員しないと儲かりません。まずは体を動かして働けってことですね。それから自分が普段、どういう行動をして、ものを買っているか、何を買って満足しているのか考えることですね。
YouTuberみたく「好きなことで生きていく」と言っても、市場からカネをぶっこぬく考え方では食えるようになっていきません。カネを儲けようっていうことよりも、人が何をしてほしいのかっていうことを考える。その先に儲かるという結果があるというのをわかってほしいです。
これからYouTuberはダメになる理由
――YouTuberという話が出ましたが、ビジネスとしての可能性はありますか?
えらてん:結論から言うと、これからYouTuberはダメです。著書の執筆時はYouTuberもおすすめしていましたが、2018年になってYouTubeのアルゴリズムが変わり、長時間動画が検索上、有利になりました。人気がある人たちは今、長時間動画を投稿するようになってきているんです。
――長時間動画が増えると、どうなるのでしょうか?
えらてん:まず視聴者が見られる動画の絶対数が少なくなり、新規参入者が発見され、人気者になる確率が下がります。また、大手YouTuber事務所は動画を作るための編集作業にもっとお金を使っていき、編集外注費がどんどん上がっていきます。
人手もかかります。新規参入者はチャンネル登録数が1000になるまで収益は出ないという状況下で、相当なやる気か広告費や外注費、企画など金の投入などがないと成功することはないです。
――ただ動画を上げているだけではダメだということですね?
えらてん:ポートフォリオとしての効果はあります。例えば、地元の店の食べ歩きなどの動画を上げて、地元の情報みたいなものを作る。取材するときに「こういう動画を出しているんですよ」と言うと、相手にすぐに分かってもらえます。