27歳助産師“シオリーヌ”が小中学生に「性教育」を行う理由
日本で浸透しにくい「セクシャル・コンセント」とは?
――性教育が不充分じゃない社会では、男性はAVから、女性はパートナーの男性からセックスを教わることが多いと思います。これにより、男女双方にセックスに対する偏ったイメージが浸透しているのでしょうか。
大貫:最近はセクシャル・コンセント(性的同意)という言葉が使われるようになってきました。つまりは性交渉をする上でお互いに同意を得るようにしましょうということなんですけど。
スウェーデンでは、性的同意がない性交渉はカップル間だとしても強姦にあたると法律で明記されています。でも日本ってそういう意識って薄い。日本のAVで描かれるセックスって、何だか知らないうちにいい感じになって、女の人が言葉では「イヤ」って拒否を示しているけど、気づいたらその気になっているという。つまり、同意をとるシーンってほとんど描かれないんですよね。
女性もそういう求めに応じるのが女の務めみたいなイメージを刷り込まれていて、自分から「こうされたい」、「こうしたい」っていうのは、はしたない女性だと思われそうでなかなか言えない。男性もセックスは男がリードするものだという考えを植えつけられているから、女性にダメ出しされるのは情けないみたいな思い込みがある。男女それぞれに呪縛がある気がしますね。
――学校で行う性教育の講演のほかに、若者向けの性と命の語り場イベント『イノチカタルサロン』も主催されてます。こちらはどんな趣旨があるのでしょうか。
大貫:20代の男女が酒でも飲みながら性について語り合おう、という会です。参加者からは「性の話がこんなに楽しいとは思わなかった」という声を頂きました。
性の話ってどうしてもハラスメントが生まれがちなんですよね。仕事の場に若い女性がひとりいるだけで「花があるね」とか言われる。男性同士でも「若いのに彼女がいないの?」って聞かれたり、付き合いで風俗に連れて行かれたりするじゃないですか。
ハラスメントを含む表現は取っ払って、オープンにディスカッションできる場所にしていきたいですね。
「継続的に性教育を学べる場所を作りたい」
――産婦人科を経て性教育に関わる活動をされている大貫さんの立場から、親は自分の子どもにどう接していけばいいとお考えですか。
大貫:親の中にある理想の子ども像を押し付けないということ。いくら自分の子どもであっても、その子が何を良しとするかの決定権はその子自身にあると思うんですよね。
周りの大人にできることは、なるべく多くの選択肢を見せてあげることだと思うんですよ。例えば、子どもだけでは行けない場所に連れていってあげたり、会えない人に会わせてあげたりとか。選択肢を見せるのが親の役目だし、最終的に親が思い描いてなかった道を選んだとしても、子どもが納得できる方向に進むのを見守ってあげる。
もし子供が苦労する方向を選んだ場合、親心としては止めてあげたくなっちゃいますが、本人の権利を尊重してあげることが大切なのかなって思いますよね。