27歳助産師“シオリーヌ”が小中学生に「性教育」を行う理由
みなさんは自分が受けた性教育の内容を覚えていますか?
精神科のナースとして働きながら、全国の小中学校やフリースクールなどで性教育に関する講演活動を行っている大貫詩織さん(27歳)。
Twitterやブログなどでは“シオリーヌ”として、明るくオープンに性に関する情報の発信を行っているのが印象的です。大貫さんの現在の活動にいたる経緯から、日本の性教育をめぐる実情についてお話を伺いました。
家庭の不和から「家族って何?」と考えるように
――まずは現在に至るまでのキャリアを教えてください。
大貫詩織(以下、大貫):大学を卒業後、助産師として産婦人科で3年間勤めました。それから転職して、今は精神科の児童思春期病棟に正規職員として働いています。
今は精神科に勤務しながら月に4、5回の講演を行っていますが、常にSNSやブログで性に関する情報発信をしたり、性教育の授業のための教材を作ったりしているので、仕事の割合としては精神科と性教育は半々くらいになってますね。
――国家資格の助産師を目指そうと思ったきっかけは?
大貫:10代の頃、家族関係がうまくいっていなくて。特に父とはうまくいっていませんでした。学校の成績が悪いと「お前みたいな娘がいて恥ずかしい」「一生懸命育ててきたのに、こんな風に育って悲しい」とか、とにかく否定的な言葉をたくさん浴びせられました。
そんな家庭環境もあって「家族って何?」「親子関係って何?」とか、常に考えてましたね。そんな時期に、とある産婦人科の先生の著書に出会いました。そこには夫婦の間に子どもが産まれて、家族ができていくプロセスが書いてありました。そこから「家族」というものについてもっと考えていきたいと思うようになり、家族や親子に触れる仕事として、産婦人科に勤める助産師を目指そうと思いました。
――産婦人科から精神科ナースへ転職した理由は?
大貫:3年間、産婦人科で働いているといろんなお母さん方と出会うんですよね。未成年で妊娠・出産する女性もいれば、高齢出産で体力面で苦労されている女性もいました。そこで私が感じたのは、予備知識がないまま妊娠・出産を経験する女性が多いということです。
それで、早い段階で正しい性の知識を身につけることの大切さを考えるうちに、性教育に興味を持つようになりました。産婦人科で働いていたときに思春期保健相談士という資格を取って、小中学校で講演活動をはじめたのですが、そうしたなかで、もっと子どもたちと直に向き合いたいという思いが強くなったのが転職した理由です。
遅れすぎている「日本の性教育」の現状
――ニックネームである“シオリーヌ”を名乗り、Twitterやブログで情報発信を行っていますが、セルフブランディングや性の問題に関わる上で、ご自身のスタンスをどのようにお考えなのでしょうか。
大貫:セルフブランディングというような大層なことは考えていません。私と同世代の子が運営している「ぺーたーず」というコミュニティがあるんですけど、そこで知り合った子たちから“シオリーヌ”と呼ばれるようになりました。
普通、呼び名って初対面だと「大貫さん」、仲良くなると「詩織ちゃん」って変わってくると思うんですけど、最初から“シオリーヌ”って呼んでもらうと名前を覚えてもらいやすいんですよね。それで自分からニックネームを名乗っています。
性に関わる活動をしてると、すごく真面目になるか下世話な下ネタになるかの二極化になりがちですが、私は常に中間くらいの立場でいたいと思います。堅苦しい性教育の専門家というでもなく、ただ下ネタを話す女の子ですみたいな売り方でもない。肩肘張らずに自然体で活動したいというのはありますね。