Googleマップはこうして誕生した「地球が、動いてる!」
技術には感心するも活かせるかどうかには疑問が
見覚えのある金属板の屋根、自宅前に停めてあるフォードのエクスプローラーといった見慣れた景色に「なんてこった」と叫んだキルデイ氏。その反応をみて、ハンケ氏は「なかなかすごいだろ?」と自信満々に返しました。
興奮を抑えきれないキルデイ氏は、さらに「母の家が見たい。708、アットウェル、ビレア、テキサス」とハンケ氏に言いました。
仮想空間で懐かしい景色と“再会”できる。続けて「ホーリーゴースト・カトリックスクール。ビレア・リトルリーグ野球場は?」と尋ねたキルデイ氏でしたが、思い出の場所を巡りながら「ここにあるコンピュータの画像ほど、私を11歳だった時のあの瞬間に連れ戻すのはなかった」と振り返っています。
ただ、一方でこの技術が活かせるかといえば、当時からすると「私にはピンとこなかった」と明かすキルデイ氏。その反面、ハンケ氏は「シードラウンド(ベンチャー企業が投資家などから資金調達を受ける手段)で数週間内に1000万ドルを調達する予定だ」と自信たっぷりに話しました。
のちの2004年にGoogleに買収されたキーホールでしたが、当時はちょうど、ネット企業の創業が相次いだドットコムバブルが終焉の兆しを見せ始めていた時期。アクティブユーザー数の増加に期待を寄せるのではなく、サービス自体の収益や損失といった現実的な視点を投資家たちが持ち始めていたことから、目標としていた1000万ドルの調達は叶いませんでした。
当時の世相もふまえてキルデイ氏は、創業について「これ以上に最悪のタイミングはなかった」と話します。しかし、年内に会社としてのスタートを果たしたキーホールは、生活を変化させるほどのイノベーションを世の中にもたらしました。その背景にあったのはきっと、ほんのわずかな情熱や野心、好奇心だったといえます。
<TEXT/カネコシュウヘイ>