『13歳のハローワーク』の呪縛は今日も会社員を苦しめる――人気コラムニストの「仕事論」
思い上がりがないと「フリーランスでやれない」
――「bizSPA!」世代の20代を想定して、若い頃の自分に言いたい言葉って何かありますか?
小田嶋:若いときは、実際おれバカだったと思うんですよ、いろんな点でね。でも、バカだから諦めなかったみたいなことも、結果的にはあった。
ちょっと思い上がっていた時期もあって、「自分には才能があるんだから関係ねえよ、問題ねえよ」なんて言いながらいろんな危険を無視していました。今思うと完全な思い上がりなんだけど、でも、あの思い上がりがなかったら、フリーランスとしてやれてなかったはずなんです。
――謙虚さではなく、思い上がりのほうが良かったってことですか?
小田嶋:ええ。謙虚に構えて、自分なんかが認められているのは偶然にすぎないんだから、もっと頑張らないといけない、なんて考えていたら、きっと不安に陥ってつぶれていたと思うんですね。
酒を飲みすぎても「人生の一休み」だと思う
――なるほど。そこでも自己肯定感の強さが大事になるのかもしれない。
小田嶋:思い上がらずに一生懸命頑張っていれば、もっといいライターになっていた可能性はあります。でも、頑張って努力して伸びる部分よりも、精神が持つか持たないかのほうがずっと大きいんですよ。
私の周りの人間を見ていると、なんでダメになったかというと、思い上がって怠けてダメになったっていうやつはあまりいない気がします。
どちらかというと、色々なことのプレッシャーに耐えられなくて、精神のバランス崩したり、うつ病になったり、というケースが目立ちます。だから怠けてダメになるってことはあんまりない(笑)。
――フリーランスって、確かに将来の不安から仕事抱えすぎて、がむしゃらに頑張りすぎてしまう人もいますよね。
小田嶋:私は30代の頃にアルコール中毒と診断されるまで酒を飲んでしまいましたが、果たして酒を飲まずに頑張れていたら良かったのかというと、必ずしもそうじゃないと思っています。
ああいう仕事のない困難な時期を、酒飲んでやり過ごしたというのは、一種のリタイアというのか、人生の一休みだったのかなと思っています。酒を飲んでいるから仕事がなくなったとも言えるけど、仕事がないから酒を飲んじゃったとも言えるわけですし。