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胃腸薬から始まり目薬で大革命。ロート製薬の歴史と今に迫る!

ビジネス

今から124年前の1899年、大阪で初声をあげたロート製薬。胃腸薬を発売し、その後目薬を発売し、大革命を起こし、現在絶大な支持を誇ることはご存知の通り。読者も一度や二度お世話になったことがあるであろう、大衆薬とスキンケア商材をメインとしたメーカーだ。

目薬を始めとした身近な医薬品・化粧品メーカーとして知られるロート製薬の歴史と幅広い取り組みに迫る

現在も大阪に本社を置きながら、アジア、欧米、ヨーロッパなど110カ国以上にネットワークを持ち、また今日では身近な医薬品・化粧品だけでなく、農業・畜産業やレストランなどの「食事業」、いまだ治療法が見つかっていない難治性疾患に対する効果が期待される「再生医療事業」など、幅広い事業に取り組んでいる。

多くの人がお世話になっているロート製薬の目薬

ここでは、そのロート製薬の歴史を振り返りながら、近年積極的に実施するようになった意外と知られていない取り組みなどについて、ロート製薬担当者に話を聞きながら紹介していく。

創業初の商品は目薬ではなく「胃活」

ロート製薬の出発点となった胃腸薬「胃活」

冒頭で触れた通り、創業当時のロート製薬(創業時の名称は、信天堂山田安民薬房)は、胃腸薬の発売から始まった。その名は「胃活」。近年よく聞く「就活」「婚活」「ヌン活」といったワードにも似た名称だが、この商品にかけた創業当時の思いは強いものだったと担当者は言う。

「当社の創業時、世の中では食の欧米化が進んでいました。そんな中、『万病のもとは胃にある』と、創業者が当時の健康課題に着目して胃薬を発売しました。それが『胃活』です。ユニークな発想の広告メッセージにより、順調に売り上げを伸ばしました」(ロート製薬・担当者)

その創業から数年後の日露戦争が終わった後、トラホームという伝染性の慢性結膜炎が流行し、目薬の需要が高まった。これを受け、1909年に点眼液「ロート目薬」を発売。さらに1931年には「ロート目薬」を今の目薬の形状と似た新容器「滴下式両口点眼瓶」を開発。この新容器は、目薬業界の大革命となった。

目薬業界の大革命となった滴下式両口点眼瓶を採用した「ロート目薬」

目薬、胃腸薬、皮膚用薬の3本柱で成長

1949年には、「ロート製薬」として株式会社を設立。引き続き目薬、胃腸薬を中心に「より良い商品を」と開発を続ける一方、1970年代には、アメリカ・メンソレータムより商標専用使用権を取得。ロート製薬の事業の「第3の柱」として、スキンケア分野にも進出した。

「ここまでに培った目薬、胃腸薬、スキンケア医薬品から領域を広げ、今日の当社の商品ラインナップに繋がっています。

目薬やコンタクトケア製品などをはじめとするアイケア商品、ボディウォッシュやリップクリーム・ハンドクリーム、そして化粧水・美容液などの機能性成分と効果にこだわるスキンケア商品など。

サプリメントや漢方といった内服なども含め、人々の美と健康に関する商品を幅広く企画・製造・販売しています」(ロート製薬・担当者)

現在の主要製品の一例。目薬、胃腸薬、外皮用剤以外には「妊娠検査薬」などもある

商品以外の健康貢献、社会貢献も積極的に行い始めた2000年代

胃腸薬、目薬、外皮用剤の販売を通し、多くの人々に健康面での寄与を果たしてきたロート製薬だが、特に2000年代以降は、こういった商品の販売とは異なる別の角度からの貢献や社会に対する貢献も数多く行っている。あまりに多岐にわたるため、全てをここでは紹介できないが、その一部を教えてもらった。

ロート製薬が実施した、アジア地域での無料眼科検診の様子

「2003年に発足した社員が社会貢献活動に参画する機会をつくるため有志社員より提案され発足した『かるがも基金』では、一口390円(サンキュー)から社員有志による積立募金と会社からの支援を合わせたものを原資とし、毎年社会に必要とされる福祉や環境活動に役立てるチャリティ募金です。募金額は年々伸び、盲導犬の育成支援などに役立てていただいています。また、中国、ベトナム、ミャンマー、カンボジアなどで無料眼科検診も実施。目の健康への支援も行なっています」(ロート製薬・担当者)

社員の99.9%が非喫煙者に。社内の「健康サポート」「働き方」も画期的

ロート製薬は社内における「新しい働き方」も積極的に取り入れ実施している

さらに、担当者によれば、ロート製薬は社外的な社会貢献だけでなく、社内あるいは自社社員に対する時代に則した健康面での取り組みは、近年注目される以前の1970年代から積極的に取り組んできているという。

「製薬会社として健康を届けるためには、社員から健康でなくてはならない」という考えのもと、1970年代より全社員での朝の体操、2002年には体力測定、2017年からは全社員を対象にしたウォーキングイベントを実施。さらに2020年には「喫煙をしていない従業員が99.9%に到達」した。

また、2021年から今日に至るまでは、社員一人ひとりがウェルビーイングであるための目標を宣言する健康KPI(数値目標)を設定し、チーム単位での目標実現を促したり、パーソナル睡眠チェックを実施するなど、社員自ら健康になれるようなユニークな仕掛けを行い続けている。

「当社は『人が活きてこそ企業が活きる』という理念があり、こういった社員の健康面でのサポートや取り組みは実に多岐にわたります。

加えて『働き方』についても柔軟で、他に先駆けて副業を解禁・推奨したり、個人の想いをもとに起業する社員を社内クラウドファンディングで応援するプロジェクトに取り組んでいます。

これらは社員一人ひとりのキャリア自律に制限をかけずに、社会課題に取り組める社員の想いを後押ししており、一貫して『社員』の成長に焦点を当てています」(ロート製薬・担当者)

社員の挑戦が束となり、企業活動となり、新社会形成を目指す

ロート製薬の社員・企業活動が、新しい社会作りのヒントになることに期待大

前述の「人が活きてこそ企業が生きる」を、違う言い方をすれば「(企業が陥りがちな)万病のもとは、社員にある」と言い換えることもできよう。

創業時、「万病のもとは胃にある」とし、その胃を守るための製薬を行い挑戦し続けてきたロート製薬だからこそ企業の要となる「社員」を手厚くサポートしているようにも映った。結果こういった素晴らしい企業風土や体制の中から生まれる商品、取り組みこそが、社会貢献へとつながるようにも思った。

来年で125周年を迎えるロート製薬だが、改めて「どんな企業であり続けたいか」を担当者に聞いた。

「当社は社会課題解決のためのチャレンジを通じて、企業が持続的に社会に貢献し続けることができると捉えています。

社員一人ひとりの意思から生まれる社会課題へのチャレンジが束となり、企業としての活動となって、新たな社会を創っていく……若者たちが自らの道を自身で切り拓き、希望を抱いて前向きに進める未来へと『つなぐ』ことにも、貢献できる企業でありたいと考えています」(ロート製薬・担当者)

<取材・文/松田義人>

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ロート製薬
https://www.rohto.co.jp/
 

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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