夢を支える「金欠メシ」。小説家志望の女性がみつけた調理と執筆の共通点
ある程度の金銭的余裕と時間があれば夢を叶えられるのにと、悔しい思いをすることもあるかもしれません。けれど、今回話を聞かせてくれた臼井洋子さん(仮名・28歳)のように、金欠だからこそ気づけることもあるようです。
臼井さんは、子どもの頃から「小説家になりたい」と思っていましたが、小学校のときに両親が離婚。女手ひとつで育ててくれた母が高校生のときに病気になり、病院に通いながらどうにかパートを続けているような状況でした。
高卒で社員食堂の調理員として就職
「そのため高校生の頃から、学校が終わるとすぐにバイト先へ行って働けるギリギリの時間までアルバイト。家計を支えながら高校を卒業し、社員食堂の調理員として就職しました。母はもうその頃には働くことが難しくなり、私が大黒柱として働く必要があったのです」
母の病院代もかかるため、社員食堂の調理員として働きながら、夜は飲食店でアルバイト。帰宅すれば、母の食事づくりが待っています。朝は、朝食と自分の弁当、そして母の昼食も作る毎日。節約のために外食はせず、安い食材を工夫してボリューミーに仕上げます。
私の料理を見て母が言い放った一言
「いわゆる“金欠メシ”です。ただ、食べることぐらいしか楽しみのない母のために、パンの耳で“なんちゃってケーキ”を作ったり、コンニャクや高野豆腐を肉に見立てて料理をしたりすることもありました。でも、やっぱり毎日はキツイです」
昼間は社員食堂で調理し、アルバイトでも調理を手伝い、家に帰っても料理をする。いい加減、嫌気がさしていました。そんな日々の生活に追われ、小説を書く時間もないまま、小説家になる夢も薄れていたときのことです。
「母が私の料理を見て、『おいしい! 安い食材も、洋子の手にかかるとご馳走になるわね。まるで、物語のはじまりからエンドロールを見ているみたい』と言いました。母が料理を褒めてくれるのは珍しいことではありませんでしたが、そのときの言葉にハッとしたのです」