バブル以来の高騰で家は買いづらくなる?首都圏の地価は「三極化していく」
リーズナブルな中古を買い、リノベの動きも
住まい選びでは新築だけでなく、中古も有力な選択肢です。長嶋さんによれば「10年ほど前から中古を安く買い、リノベーションをするトレンドが見られますが、コロナ禍でそのようなケースが増えました」と言います。
また最近は半導体不足や建築費の高騰などで新築が建ちづらくなっていることも、中古物件の需要を支えています。一般財団法人建設物価調査会 総合研究所が発表している「建設資材物価指数」では、東京における建築費は2011年1月から大きな上昇は見られないことを示しています。しかし2021年からじわりと上がり始め、2022年8月には前年同月比で1割強高くなっています。
いざ家を買うとなったとき、三極化の話で出てきた上位15%や中間70%でも利便性が高い場所などはどうやって選べばいいのでしょうか。情報収集法について長嶋さんに聞いてみました。
「自分で調べるとしたら、レインズ(不動産流通機構)のマーケットデータが良いと思います。これはマンション、戸建双方の成約状況についてまとめたレポートで、その月の成約件数や成約価格がどうだったかが載っています。2002年までさかのぼって過去データも見られるため、推移のチェックにも役立ちます」
素人に任せるのは…10年後の価格は予測困難
「あとは不動産に詳しいだけでなく、将来的な地価の予測ができるような方に相談するのも良いですね。当社にも同様のご相談をいただくことがあります。節税や家計管理においてはファイナンシャルプランナーは心強いものの、10年後に土地の価格がどう変わるかまではわからないことが多いです」
余談ですが、住宅の取引価格については、国土交通省が提供している「不動産取引価格情報検索」でも知ることができます。同サイトでは検索時期とエリアを選択すれば成約実績を検索できるため、成約価格の情報収集が可能です。
家は「一生の買い物」と表現され、価格は高額のため購入時には迷うのは当然です。基準地価や成約事例のサイトを自分で見たり、不動産取引に精通している人にアドバイスを求めるなどして、「買ってよかった」と思える住まいを選びたいですね。
<取材・文/薗部雄一>
【長嶋修(ながしま おさむ)】
1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「株式会社さくら事務所」を設立、現会長。2008年、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会設立、理事長に就任。様々な活動を通して“中立な不動産コンサルタント”としての地位を確立。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。新著に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)他、著書・メディア出演多数