なぜ過剰な長時間労働は生まれるのか?「日本の悪しき労働文化」を弁護士に聞く
厚生労働省の発表によれば、労働基準監督署は2021年度に長時間労働が疑われる事業場に対して監督指導を実施。この監督指導により、対象となった約3万2025か所の事業場のうち、違法な時間外労働と確認できた事業場は1万986か所(34.3%)にのぼったという。
記憶に新しいのは2022年8月22日、うまい棒の製造会社「リスカ」の社長が、違法残業の疑いで書類送検されたニュースだろう。我々にとって、この問題は他人事ではない。今回は労働基準法やパワハラに関して、どう向き合ったらいいのか。東京法律事務所の笹山尚人弁護士に取材した。
労働者と会社の力関係を維持する法律
労働基準法があるのは知っているが、どんなものなのかと問われたらしっかり答えられない。そこで笹山氏にわかりやすく労働基準法に関して説明してもらった。
「私たちは通常、“労働契約”という形態で働くことが多いですよね。その契約は『労働者と会社でお互い自由に労働のルールを決めましょう』というのが大原則なんです。ただ、本当に自由に決めたら労働者と経営者の力関係がかなり違いますよね。大企業と契約する個人が対等な契約を結べるかというと、そうではありませんよね。
実際は企業側が圧倒的に力を持っていて、雇うも雇わないも企業側の胸先三寸みたいなところがあります。そこで労働についての基準を定める法律、労働基準法ができているわけで、“労働法”の中核的な法律のうちのひとつです」
過労死でも責任者が逮捕されない?
前述のリスカのような超過労働が発生した場合、責任者はどのような罪状になるのだろうか。
「労働時間の上限は原則週40時間、1日8時間となっています。それに対して会社は例外を設けられます。典型的なものとして36(サブロク)協定があります。これは会社と労働者代表との間で、『時間外労働に関してはこの方法でやりますよ』というルールを決められるものです。
そのルールから外れている場合は、労働基準法32条(労働時間)や36条(時間外・休日労働協定)違反として刑事犯罪になります。刑事犯罪として、監督している人や責任者が30万円以下の罰金または半年以下の懲役に問われることはあり得ますね」