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「弁護士ドットコム」創業者の新たな挑戦とは?民間から国政、そしてまた民間へ

ビジネス

民間にふたたび戻る決断をしたワケ

元榮太一郎

――今年6月に参議院議員の任期が満了になります。7月の選挙には出馬されない意向を表明されていますね。ビジネスの世界に復帰するとのことですが、政治の世界で生きていこうという選択肢はなかったのでしょうか?

元榮:もちろん悩みました。身体が2つあれば、両方やっていきたかった。確かに昭和の時代ですと、西武グループの堤康次郎さん、鹿島建設の鹿島守之助さん、富士急行の堀内光雄さんなど、実業と政治を両立されていた方々はたくさんいらっしゃいました。でも、時代が猛スピードで変化していく中では、100%の力を発揮して両立していくことは不可能だと思ったんです。

 一度きりの人生です。自分の社会的価値を最大限に発揮することを考えれば、この40~50代という気力も体力も馬力もある今こそ、ビジネスに集中する時期だという結論に至りました。ゼロからイチを作り出すような、また従来の常識の反対側を攻めるような発想を持って、社会に新しい価値を生み出す事業を手掛けていきたいとワクワクしています。

 今、日本にはさまざまな課題が浮き彫りになっています。特に政府が掲げる成長戦略の担い手は、間違いなく民間企業になるはずです。日本から世界に羽ばたくような、日本に暮らす人たちに希望を与えるような、そういう企業をつくるということは、これはとてつもない社会貢献にもなるはずです。そのようなことを考えて、民間に戻る決断をしました。

FAX文化がいまだに残る弁護士の世界

元榮太一郎

国会議員としての責務を果たし、民間に戻る元榮氏(ツイッター@TaichiroMotoeより)

――2005年に立ち上げた弁護士ドットコムは株式上場も果たし、すでに登録弁護士は2万1000人以上に達しています。これは日本の弁護士人口約4万1000人のうち、50%以上。それでもまだ“道半ば”なのでしょうか?

元榮:「弁護士ドットコム」というサイトもまだ始まったばかり。あらゆる方が法律に困った際にアクセスするという意味では、まだまだ伸びしろがあるはずです。実際、2005年にスタートした時から、ほとんどサービス設計は変わっていません。ここからはAI(人工知能)などの新しい技術を駆使して、より質の高いサービスに生まれ変わっていくべきなのです。

 また、民事裁判は2025年までに段階的にIT化されていきます。オンラインで訴状を提出し、口頭弁論などもウェブ上で行われるような時代がやってくるのです。まさに弁護士のDX(デジタルトランスフォーメーション)ですね。弁護士の世界においては今でもFAXを使って裁判所に訴状などを提出しているという実状があります。これはそろそろ変わらなければならない時期ではないでしょうか。

 司法の現場だけではなく、世の中のIT化が進めば、電子契約が必要になります。すでに弊社では、「クラウドサイン」というウェブ上で完結するクラウド型の電子契約サービスを展開しており、導入企業数も130万社以上、これまでに締結された同サービスでの累計契約数も1000万件を超え、国内No.1の電子契約サービスに成長しています。

 ほかにも、税務相談の「税理士ドットコム」も日本最大級の税務相談ポータルサイトに育っています。直近では、企業法務はもちろん、資産運用・管理から家庭内のトラブル、プライベートでの悩みまでを解決する「プライベートウェルスサービス」にも進出しています。今後も国政の経験を生かして、社会のためになるさまざまなプラットフォームを作っていきたいと考えています。

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