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不動産業界「ファックス文化」に“変化の波”。ハンコ、印紙税…業者の本音は

ビジネス

法改正で変わった2、3つ目のポイント

不動産

2:重説、契約書に宅建士の押印が不要に

 重説、契約書締結がオンラインで完結できる背景には、押印がいらなくなったことが大きな役割を果たしています。改正前には、契約書には宅建士の記名と押印が求められましたが、改正後は記名のみでOKとなりました。さらに書類を顧客に郵送しなくてもメールで送付できるようになりました。

3:宅建士のリモートワークが可能

 旧宅建業法では事務所に「専任の宅建士」を常駐させるルールでしたが、法改正により「ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で」との条件付きで、宅建士が事務所以外の場所でも勤務できるようになりました。ネット環境が整い、業務を滞りなくできる環境であれば自宅でも働けるようになります。

 これは宅建士の働きやすさにつながり、「資格は持っているし、経験もあるけど、事務所に常駐するのは厳しい」といった方の雇用に結び付きそうです。ただし、オンラインでの取引は不動産業者と顧客間での合意があった場合のみです。法改正は、あくまでオンライン取引の選択肢が加わったという意味であることを強調したいと思います。

大手は前向きだが、様子見の企業も多い

 改正宅建業法の施行を受け、不動産業者が相次いでプレスリリースを発表しています。業界大手の住友不動産は「電子契約の導入により、ご自宅で契約手続きが完結、お客様の利便性が向上」と評価

 賃貸仲介大手のハウスコムも「書面の作成や郵送の手間などを省くことができるため、業務を効率化することができ、コスト削減も実現します」「契約締結までの時間が短縮され、保管の効率化、デジタル完結するなどの利便性が向上する」などと法改正に前向きな姿勢を示しています。

 両社とも契約の完全オンライン化を進めることを発表していますが、しかしこれらはあくまで一部の話。国は不動産取引のオンライン化を認めましたが、現場にスムーズに浸透するとは限りません。

 都内にある賃貸仲介会社の営業職として働く松岡さん(仮名・20代)は、「法改正に備えて準備をしてきた業者であれば適用できると思います。でも準備ができるのは人員にゆとりがある大手が多いはず。オンライン取引という選択肢が増えるのは良いことだと私は感じるものの、業界全体に広がるには時間はかかると思います」と話します。

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