『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督に聞く「逆境の楽しみ方」
――本作は「低予算でもこれだけ面白いものが作れる」という夢や希望のある前例となりましたが、いまの映画・映像業界のあり方に疑問を感じることはありますか?
上田:僕もインディーズ業界にいたので、人手やお金が足りないとかはよく聞きますけど、僕はあんまり感じたことがないんですよ。だから、言いたいだけなんじゃないかなと思うことも。改善に動くよりも、嘆いているだけのほうが楽ですからね。でも、それはどんな仕事でも一緒で、残業の不満を言うより、「残業を減らす方法を考えようぜ」って思うんです。
――では、いまの業界に対して、改善方法を提案するとしたらどんなことですか?
上田:この作品では“業界あるある”も描いているだけに、業界に対するアンチテーゼだと言われることもあるんですけど、そういうことを叫びたくて作ったわけではなくて、単純にエンターテインメントの作品を作ろうと思っただけなんですよ。
それに、僕はご意見番みたいになるつもりはないんですが、それを踏まえたうえで言うとすれば、精神論ではなく、システム自体を変えないとダメだとは思います。できるかわからないですけど、たとえばヒットしたらスタッフとキャストに興行収入の何%かが分配されるというのを事前にきちんと書面化するとか。そうすれば、現場全体のモチベーションも変わりますよね。
20代は失敗を集める気持ちでどんどんトライする
――それでは最後に、20代の「bizSPA!」読者に向けて、人生における「ブレイク」を迎える前の「下積み」時代をどのような心がけで過ごすべきか、アドバイスをお願いします!
上田:僕は何をやるにも躊躇がなかったので、20代前半は本当に失敗ばっかりでした。「とりあえずやります!」みたいなノリのよさがあだとなり、失敗も多くなりましたが、それがあったからこそいまがあるので、25歳くらいまでは失敗を集めるくらいの気持ちで、どんどんトライしていったほうがいいですよ。
そうすれば、30代に入ったときに、身に着けている“武器”が多くなると思います。それに、失敗を集めているくらいの気持ちで生きていれば、失敗したときにあんまり凹まないんですよ。
あと、自分の生活のなかに失敗をエンターテインメント化してアウトプットできるようなところもあれば、よりいいと思いますね。というのも他人の失敗って結構笑い話になったりしますよね? だから、たとえばTwitterとかでもいいんですけど、失敗をどう伝えるのが一番おもしろいかというのを考えてみることです。そんな風に失敗を楽しめるようになるのはいいことだと思いますよ。
<取材・文/志村昌美 撮影/長谷英史>
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